過去ログ - 貧乏神「私がメイドですかッ!?」
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage sage]
2012/05/01(火) 21:50:35.64 ID:BKntfQyDO
〜 街 〜
貧乏神「うぅ……」
トボトボと、ネオンきらめく街を裸足で歩いていく貧乏神だが霊体なので一般人には姿が見えない。
背中には所々が破れた風呂敷を大きく膨らませ、さらにその後ろには足がすべて折れてプラプラと揺れているちゃぶ台を背負っている。
お情けで家具だけは『投げて』返して貰えたが、結界を張られてはもう帰る事も出来なかった。
貧乏神「……あそこほど居心地のいい場所なんて」
貧乏神は歩きながらつぶやき、だがそれ以上は言わずに口を閉じる。
──ありすぎる。
現在は平成の大不況、困窮にあえぐ声は止まない。
貧乏人を見つけるのは容易く、そいつに着いていけば暗く淀んだ居心地の良い場所も腐るほど見つけられるだろう。
しかし、この貧乏神はそれにホイホイと甘んじるのが嫌だった。
貧乏神「……」
貧乏人と貧乏神は最高の相性、結ばれるして然りのパートナー。
だが、青色吐息の貧乏人にとって貧乏神に取り付かれるというのは、それすなわち死神に魅入られるのと同義である。
自分のせいで住人が首を括る、なんて考えたら、いくら貧乏神でも背中に寒気を覚えてしまう。
貧乏神「お金持ちも、小金持ちも、貧乏人も、自分たちが居続けたら最後は首を括る……か」
昔会った先輩がそんな事を言ってた気がして、貧乏神の気が滅入って来る。
貧乏神は頭を振って思考を無理矢理に切り替えた。
貧乏神「いや、年金とか生活保護とか、国家からの支援を受けている人……なら……」
意識の切り替えに失敗。
自分が死肉を漁る醜い怪物のように思えてしまい、それ以降は完全に閉口する。
そして、どれくらい歩いたか。
気が付けば、貧乏神は人気(ひとけ)の無い街の郊外へと辿り着いていた。
まるで、人々の目から逃れるように。
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