84: ◆IsBQ15PVtg[saga sage]
2012/06/11(月) 22:57:38.31 ID:Ja2hPHRV0
初春「ううっ……」
空気を吸った途端、思わず口を手で塞いでしまう。
図工室の内部は、黴臭かった。
外の廊下もそれなりに黴っぽい空気が漂っていたが、この部屋の空気はそれを凌駕していた。
嗅覚が麻痺しそうなぐらい、それこそ息を吸い込もうものなら、大量の黴の胞子が体内に侵入しそうなぐらいとも言えた。
しかも、湿気もまた廊下の比じゃないぐらいに高い。
少し動くだけでも、着ている服の内側が蒸しっぽくなり、汗が噴出してくる。
刻命「これはたまらんな。長居は無用といった所か」
彼もまた、同様の不快感を感じていたのか、顔を顰めながら周囲を見回していた。
天井からはいくつかの照明がぶら下がっていたが、蛍光灯が灯っているのは一箇所だけ。
教室の中央のあたりをほんのりと照らしている。
その丁度真下あたりには、白い石膏像が一体置かれていた。
デッサンの授業で使うような、外人の男性を象った上半身の像だった。
それを取り囲むように、木製の三脚イーゼルが、さらにその前には椅子が置かれている。
図工室――というよりは美術教室といった方が正しいといった雰囲気だった。
もっとも、イーゼルにはキャンバスが置かれているものがあったが、一方で脚が折れて倒れてしまっているものもあった。
床には何かが描かれたキャンバスが何枚も散らばっている。
そのうちの1枚に、何気なく目をやる。
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