過去ログ - 青子「……」有珠「……ひどい」草十郎「……ごめん」
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64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/14(月) 21:33:39.30 ID:8eIhzJZJ0


「残念ながら、今日この日をもって私は協定から外れさせていただきます。
 構わないでしょう?いずれ唾棄されゆく一時的な妥協だったんですから」


 そう口にしていた時の彼女に対して、青子の胸には、暗くて酷い衝動が芽ばえていた。
 唯架の明るさに対する羨望が、いつしかどす黒い嫉妬に変わっていた――唯架のくせに、唯架のくせに……。


「そうね。でも、……本当にいいの?」


 青子の感情の動きを敏感に察したらしく、唯架の表情も険しくなっている。


「この世の悲惨に喘いでいる人たちは数えきれないほどいる。
 そして、私たち主の信徒には彼らを救ける義務があるのです……
 それでいて、彼らを救けてはならないなんて、そんな掟なんか意味があるはずないわ」


「…………」


 青子は沈黙した。
 たしかに彼女の言うとおり、こんなのはとりもとめない茶番だ。
 行き過ぎた私たちの感情によって起きた、くだらない犠牲によって設けられた一時的な防波堤。
 あいつに嫌われたくないという、自分勝手で利己的な形ばかり取り繕った醜い良識によって
 巻き込まれた鳶丸たちにとっては、残酷でさえあるだろう。

 それだけに、なぜ救けてはならないのか、という唯架の言葉は強い説得力を持っていた。
 なぜ救けてはならないのか……これまで何人の彼を慕う女たちがそう自問し、そして、掟を破るのを決意したことだろう
 ――が、彼女の決意は、いずれもさらに大きな悲惨を招く結果に終わるのだ。
 青子は、唯架の挑戦に応じなければならなかった。



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