過去ログ - 許嫁「末永く宜しくお願い致します!」その5
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333: ◆vF1GrLS8msUg[saga]
2012/07/01(日) 23:24:11.19 ID:ZjsrLCNAO

お祈りを終えると、お父様は車ではなく別のお墓へ向かって歩き出した。

理由もわからず着いて行くと、その先にはお父さんのお墓と違って草木に埋もれたような、誰もお参りをしていないような古臭いお墓がそこにあった。


 『……男の両親の墓じゃ。 拝んでやってくれるかの?』


秘書さんが言うには、そのお墓は共同墓地なんだそうな。

恩人には新しいお墓を建てるのに、実の息子夫婦は共同墓地に入れるという矛盾にその時の私はわずかな違和感しか感じていなかったのだけれど。

今の私はそうした事情を知っている。
親族に対し、息子夫婦と縁を切った事へ一片の疑いすら抱かせないよう、敢えてこのようにしていたのだ。

決して息子夫婦をないがしろにしたわけじゃない。
それは、親友だったお父さんのお墓をお互いの墓から見える場所へ建てた事からも明らかだった。

なにより、寂れたお墓を拝むお父様の顔は、これまで見た事がない程に慈悲深いものだったから。

この時、お父様は何を思っていたのだろうか。
推測は出来るけれど、きっとそれはお父様の心中を表すには到底足りないものでしかなかったのだろう。

この日、私は初めて男くんのご両親に挨拶をした。




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