278:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[saga]
2012/07/15(日) 21:04:36.64 ID:StkKHyuC0
十三
「あの」
「何でしょうか」
やよいは、蔵の閉じた扉の向こうから聞こえる声に返事をした。
「真様は、どちらへ?」
「四条院様のお屋敷に」
少しの沈黙。
「月夜屋敷の?」
「はい、月見邸などと呼ばれることもありますが」
「そこへ何をしに?」
「あなたとの結婚を許してもらうために、
らしいです貴音の姫君と真之丞様は心やすい仲ですから、
急にそんなことを申し出て、どうなることか心配なのです。
あずさ様は、きっと大丈夫だろうとのことでしたが……」
「私をここから、出してはくれませんか。
あの方のもとにはきっと、私がいたほうが良いと思うのです。
……必要だと思うのです」
悲痛な響きを伴う声が、やよいの耳に届いた。
「良いですよ。
真之丞様のお傍にいてあげてください」
閂を外し、ガラガラと音を立てて扉を開けると、ひびきが出てきた。
「ここから見える、あの大きなお屋敷です」
やよいの助言に深くお辞儀をした後、ひびきは走り出していた。
「真之丞様のお願いですからね」
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