42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[saga]
2012/05/21(月) 22:51:24.25 ID:sMurzLOZ0
静かだ、と男は思った。
しかしそれが自分の後ろだけだと気がつく。
この若侍の背後では、虫が先程までと同様に、鳴いていた。
息が荒くなり、肩が上下する。
こいつは俺の出方を見ていると男は考えた。
落ち着こうとして、呼吸を深くする。
真之丞は相手が動くのを待っていた。
下段は元々、攻勢の構えではなく、
どちらかというと守りの太刀筋が多い。
自分の後ろでは虫がりんりんと鳴いている。
ふと笑みがこぼれた。
このまま眠ってしまえると思える程心地よい。
そう思ううちに、本当に目を閉じた。
撃ち掛かる声、勢いのある剣筋がみえる。
本当に見えているわけではない。
その時はまだ閉じたままであった。
さげた切っ先はそのままに、真之丞は右へと寄る。
切先を地面に向け、
柄が目の前にくるように振りかぶる。
すると刀身は左肩の前、剣先はその後ろへ。
ここで真之丞は目をあけた。
そこに、唐竹割りに殺到する男の刃。
自然と受け流すかたちとなる。
足を運んで、眼前の相手に振り下ろす。
一瞬の動き。
文字通り、閃く刃に、男は斃れる。
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