105:律「うぉっちめん!」[sage saga]
2012/07/16(月) 14:24:05.10 ID:fJZ3iuV80
2013年。私は唯を見ている。
2022年10月11日。私は泣いている。
澪『うわぁああああああああん! 唯! 唯ぃいいいいい!』
疲れを背負って帰宅し、ベッドに潜り込んだのは明け方近い深夜。
眠りに落ちるか落ちないかの私を、一本の電話が叩き起こした。唯の死を告げる電話が。
最初はイタズラ電話かと思った。でも、そうじゃない。唯が死んだ。何者かに殺されたのだ。
何故? とは頭に浮かばなかった。誰が? とも頭に浮かばなかった。
ただ、唯がもうこの世にいない、という事実だけが私の心に刻みつけられた。
澪『唯ぃいいい! 嫌だよ! 嫌だよぉ! うわぁあああああ!』
唯はもういないんだ。
そう考えると涙が止めど無く湧いてきた。
涙を止めようと閉じたまぶたの裏に、唯の姿が浮かぶ。
笑顔で歌う唯。泣き顔で私にすがりつく唯。陰鬱な顔で写真週刊誌に載る唯。
ずっと唯だけを見てきた。
でも、私がこれから生きていくのは、平沢唯のいない世界。
唯のいない世界で、私はミュージシャンとして生きていくんだ。
もう、唯はいないんだ。
唯はいない……
涙が尽きたのは朝の五時。
太陽が地平から顔を覗かせている。今日初めて昇る、新しい太陽。
私の世界を明るく照らしてくれた、あの輝かしい太陽は、もう昇らない。
私の身も心も焼き尽くす、あの憎むべき灼熱の太陽は、もう昇らない。
ベッドから身体を起こした私は、壁のコルクボードにたった一枚だけ貼ってある写真を剥がし、
アロマキャンドル用のライターで火を点けた。燃えていく。笑顔の私と唯が、燃えていく。
澪『唯…… 死んでくれて、ありがとう……』
遠くへ、遠くへ船出したい
去り行く白鳥のように
でも、人は大地に縛られて
この世で一番悲しい音を奏でる
一番悲しい音を
――サイモン&ガーファンクル
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