過去ログ - 律「うぉっちめん!」
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15:律「うぉっちめん!」[sage saga]
2012/05/21(月) 22:25:59.77 ID:Bk4utWlu0

明け方の衝撃が、日中から夜にかけての悲しみと陰鬱が、五感に甦ってきた。
全身を震わせながら滂沱する梓。それに構わず、律は話を始める。

律「唯が殺された。誰かに。私はその誰かを探し出す」

梓「もう帰って下さい……」

律「唯が私に言うんだ。事件の真相を暴いてくれって。だから、私は唯と約束した」

梓「帰ってよぉ!」

律は不意に立ち上がると、梓の胸倉を掴み、キーホルダーを眼前に突きつけた。

律「何で私がこれを持ってると思う!? 唯が私に電話してきたからだ! 殺される直前に!」

梓「!?」



律『もしもし、唯? どした?』

『誰!?』

『ぎゃっ!』

携帯電話そのものが何かにぶつかる激しい音に続き、ガラスが割れる音。

律『唯!? どうした! 何やってんだ!』

『う…… うぅ……』

ジャリジャリと細かい何かを踏みつける音。

『やめて…… お願い……』

律『唯、待ってろ! 今すぐ行くからな!』



律「私が駆けつけたのは警察が来るほんの少し前だった。唯のマンションの前に人だかりが出来てて、
  道路が血の海でさ。そこに唯が倒れてた。ひどい姿で」

梓「もう、やめて下さい……」

律「血だまりの中で、このキーホルダーを拾ったんだ。まだ使ってたんだな。あれから十何年も
  経ってんのに……」

胸倉を掴む力がフッと消え、梓は床にへたり込んだ。
キーホルダーは律の掌に乗せられており、彼女はそれを異様な眼光で睨みつけていた。

律「ただのイカレたストーカーにあんな殺し方は出来ない。きっと、唯はもっと暗くて大きな
  何かに巻き込まれたんだ」

梓は、今なら律の眼が放つ不気味さの正体がわかるような気がした。
頼られていた親友に、今際の時に助けを求められ、間に合わず無残な死骸と対面してしまった。
彼女のショック、喪失感、罪悪感、後悔は如何ばかりか。
怒りや悲しみといった感情を通り越し、精神を蝕まれていても不思議ではないだろう。

律「……帰るよ。どんな些細な事でも、何かわかったら教えてくれ。それと、お前もしばらくの
  間は身辺に気をつけろよ」

床に転がる箱を開け、袋入りシュークリームを三個程コートのポケットに突っ込み、玄関に向かう律。
その背中に、梓が呟いた。

梓「どうして、こんな事に…… あの頃はみんなで楽しくて……」

律「自分で降りたんだろ」

玄関のドアを開けた律が振り向かずに言った。

律「放課後ティータイムを終わらせたのは、他の誰でもない。私達自身なんだ」


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