過去ログ - 律「うぉっちめん!」
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94:律「うぉっちめん!」[sage saga]
2012/07/02(月) 22:50:28.68 ID:LPqSPWEC0

澪『!?』クルッ

後ろへ振り替えると、ドラムチェアから降りた律がドラムセットの前で座り込んで煙草を
ふかしている。
かと思うと、舞台袖のローディに身振り手振りで何か指示している。小走りのローディが
律に手渡したのは缶ビールだ。
その律の姿が舞台上部の大型スクリーンに映し出されると、観客はこの日最高の盛り上がりを
見せた。

澪(こんのォ……!)ビキビキ

結局、この日のステージはこれ以上ドラムが叩かれる事は無く、私はずっと律の方を睨みつけたまま歌うのだった。



2013年4月23日。私達五人は武道館のステージにいる。3rdアルバム『放課後ティータイムV』
ツアーの初日。
コンサートの時は、私達も、観客も、一曲目からトップギアだ。
唯はいつも踊るようにギブソン・レスポールを掻き鳴らしながら歌い、間奏や曲間ではステージを
縦横無尽に走り回り、ギターソロはジミ・ヘンドリクスが憑依したかの如くアレンジを利かせる。
彼女のスタミナはどうなっているんだろう。もしかしたらドラムの律より運動量が多いかも
しれないのに、コンサートは毎回、終始このテンション。
私は独り密かに、観客以上と言ってもいい程、唯のアクションに釘付けとなる。
この日も唯は、飛んで跳ねて、歌って弾いて。
クライマックスは“Don’t say lazy”“GO! GO! MANIAC”“NO, Thank You!”と、黄金
パターンのセットリスト。
その中でも“NO, Thank You!”の間奏中に構成された五分近い唯のギターソロは、まさに
彼女の独壇場だった。
ステージの両サイドに建てられた階段を駆け上り、ポップな櫓の上で二階席の観客にも
アピールし、定番ムーブのウィンドミル奏法に誰もが熱狂する。
そして、そろそろ間奏も終わりに近づき、櫓から唯が降りてきた時、それは起こった。
ややフラつき気味の唯は私へと寄り添うと、突然キスをしたのだ。

澪『んんー!』ビクッ

梓(ちょ……!)

紬(うはwww)

律(おいおい。唯の奴、ハジケ過ぎだろ)

観客『うおおおああああくぁwせdrftgyふじこlp!!』

実際のところ、完全なキスとはなっていなかった。
客席や他のメンバーには確認出来なかったと思うが、唯のキスは私の唇のすぐ真横にされた
のだった。
それは唯流のパフォーマンスに過ぎない。
でも、そんなの関係無い。
唯は悪魔だ。私の心を乱す悪魔だ。
その笑顔で私を魅了し、その才能で私を羨望させ、この上、その自由奔放さで私の心まで
乱そうとするのか。
しかも、それはただのパフォーマンスに過ぎない。
観客を喜ばせる為。自分のステージアクションの為。つまりは音楽の為。
私はどんなに足掻いても唯に伍せない。
唯は天賦の才を神に与えられ、そのベクトルをすべて音楽へ向けている。
唯が持つのは本物の翼。自由に軽やかに大空を羽ばたける。
私には蝋で出来た借り物の翼しかない。たとえどんなに頑張っても、真っ逆さまに墜落して、
地を這うだけ。
そうだ。2013年4月23日。この日、私は気づいたのだ。
こんなに大好きなのに、こんなに憧れているのに、こんなに近くにいるのに。
唯は私に絶望しか与えてくれない。

澪『唯は悪魔だ…… 私の心を乱す、悪魔なんだ……』


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