6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)
2012/05/28(月) 23:39:24.09 ID:/I28LKnko
「そうだな。あれは君が入社した頃と同じ春先だったかな」
私はあの当時を思い返し、言葉を選びながら話す。
「私はあるプロダクションに入社してから、何年か経っていた。業界では黒井と揃って敏腕なんて呼ばれていてね」
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]
2012/05/28(月) 23:44:41.70 ID:/I28LKnko
「もう一人は君もこの業界にいるのなら知っているだろう、日高舞だ。彼女は音無君とは違い、候補生の時から貫禄が違っていたよ」
「日高舞!? あの日高舞ですか?」
「そうだよ。あの日高舞だ」
日高舞は芸能界にその名を轟かせた――アイドルにこんな表現を使うのはおかしいのだが、実際に言葉の通りなのだ――お騒がせアイドルのことだ。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)
2012/05/28(月) 23:53:31.13 ID:/I28LKnko
「おい! 黒井、聞いたか? 久々に新しいアイドルがプロダクションに入るみたいだぞ」
入社した時の汚い、まるで倉庫の様だった事務所よりも広く綺麗になった事務所で、興奮冷めやらぬまま、俺は、資料の角を机で揃えている黒井に詰め寄った。
「聞こえている。それと唾を飛ばすな。汚らしい」
デスクに備え付けられているティッシュペーパーを一つまみし、資料に付いたらしい唾を拭いている。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]
2012/05/28(月) 23:54:14.62 ID:/I28LKnko
「あぁ、すまんな。そんなことより、新しいアイドルだぞアイドル!」
今回のプロデュースでは、アイドルとしての実績で黒井が育てたアイドルに負けてしまった。
アイドルを黒井との勝負の道具にしている様で心苦しいが(もちろん道具なんて思ってはいない)、俺はプロデュースで黒井と勝負するのが楽しくて、好きだった。
「ふん。またお前が負けることになるだろうがな」
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]
2012/05/28(月) 23:54:40.22 ID:/I28LKnko
「これは?」
「前のアイドルのプロデュースが終了したといっても、あの子のアイドル人生が終わったわけではないからな」
資料を拾い上げて黒井に渡す。黒井は感謝もなく資料を受け取ると、手で資料の汚れを払う。
「ふーん。俺はそんなことする必要ないと思うけどな。アイドルとの関係なんて、会ってから作ればいいじゃないか」
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]
2012/05/28(月) 23:55:19.90 ID:/I28LKnko
「お前とは反りが合わんな。で、いつ新しいアイドル“候補生”は入るんだ」
こうして軽口を叩く間柄にもなった。なんだかんだ言って、新しいアイドルについて気にしているらしい。
「おぉ、社長から聞いたんだけどな、来週には候補生で入るらしい」
「来週か。そのときこそ、お前に引導を渡してやろう」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/05/29(火) 14:37:21.17 ID:vRFJeBGa0
雰囲気バッチリだな。
読み応えありそうだわ。
期待
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東)[sage]
2012/05/30(水) 18:31:01.96 ID:EoiMD5rAO
期待!
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]
2012/05/31(木) 23:17:57.00 ID:AG48E/nCo
ちょっと文章が気に食わないので書き直します。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)
2012/05/31(木) 23:21:50.56 ID:AG48E/nCo
室内は薄暗く、ボトルやグラスが並んでいるカウンター正面の棚の背中は、薄い水色のライトが光っていて、顔を覚えてしまった初老のバーテンダーは、いつもの様に仏頂面だった。
室内の中央壁際には年季の入ったグランドピアノと、薄汚れたキックドラムが目に付くドラムセットがおいてあり、その前には演者を迎えるスタンドマイクがある。
背もたれのない固い丸椅子に腰掛け、ひじをカウンターに預け、私は横に座る、つい先日全治数ヶ月の重体から帰ってきた、期待の敏腕プロデューサーとグラスを打った。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]
2012/05/31(木) 23:23:28.62 ID:AG48E/nCo
今日は我が765プロダクションの皆を集めて、彼の退院祝いを兼ねたささやかな花見をした。
弁当を持ち寄った娘もいて、料理に舌鼓を打ち、皆で騒いだ。
空が薄紫になったあたりで、宴は終わり、私と彼は二人だけで男臭い二次会に来たのだ。
「久々に皆で集まって、騒げたのはとても楽しかったです」
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