過去ログ - ほむら「あなたは……」 ステイル「イギリス清教の魔術師、ステイル=マグヌスさ」2
1- 20
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[sage]
2012/06/05(火) 01:10:09.50 ID:Awj1Gu8/o

 まどかは同じように浮かび上がる魔女を右手で抱き締めると、目を閉じた。

 そしてわずかな間を置いて、ふたたび開いた。
 目の前に広がる崩壊する灰色の大地は、光の差さない暗闇の大海へと姿を変えていた。
 自分の姿すらも視認出来ない不確かな空間だ。
 それは心象風景だったのかもしれない。魔女の呪いが齎したまやかしだったのかもしれない。
 真実がどうであれ、まどかは、光という存在、概念が存在できないような絶望の世界にいた。

 まどかは自分の左手を――ほむらと繋いでいた左手を見た。
 手首から先が無い。虚無だけが残る、空っぽのがらんどう。

 だけど――もう、何も怖くない。

『そう、怖くない。暗くても、見えなくても怖くないのよ。
 絶望するのは悲しい事だけれど、それを否定してはダメ。
 絶望しない人なんていないように、希望だけで生きていける人もいない。
 “もう一人のあなた”が絶望を否定せず、ただ絶望で終わる事を否定したように――』

 まどかは頷いて、一度瞬いた。
 次の瞬間、まどかの身体を中心に光が差し込んだ。
 絶望の裏側、絶望の正逆。闇で彩られた絶望の、反転した姿――光で彩られた希望が、彼女を照らし出す。

『いまよ、鹿目さん!』

 仄暗い海の、どす黒い闇を光で照らしながら、まどかは声に誘われるがままに突き進む。
 魂の残滓達が創り出す幻想的な湖水を叩き割るように、真っ直ぐ下へ、底へ、黒を白で塗り変えながら潜りゆく。
 潜り続けた先でまどかはついに見つけ出した。
 闇の奥底にある、まどかの知る暁美ほむらの魂の燃え尽きた後に残る残滓を。

『手を伸ばして!』

 励ましの声に従って、手首から先の無い左手をぐんと突き動かす。
 けれどもその手は届かない。
 すぐそこにあるのに、今なお突き進んでいるのに。
 たったの数十センチ。そのほんのわずかな距離が、手を伸ばせば伸ばすほどに引き伸ばされる。
 数メートル、数十メートル、数百メートル、数千メートルと引き伸ばされたまま、辿り着けない。

「届かない……!」

『いいえ、届くわ鹿目さん。忘れないで』


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
145Res/91.61 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice