31: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:17:11.58 ID:bzATqBdvo
 「……ごめんなさい風子、私は何も言えないわ。寂しいのは一緒だもの。 
  生徒会長失格ね、友達一人励ませないなんて」 
  
  ――和ちゃんも私と同じなんだ。 
  
32: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:17:49.85 ID:bzATqBdvo
  手の冷たい人は心が温かいと言われている。 
  
  ――じゃあ和ちゃんの手はどうして温かいんだろう。 
  
  夕日は顔をひそめ、蛍光灯の明かりが教室を支配している。 
33: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:18:21.64 ID:bzATqBdvo
  長い沈黙のあと、最初に口を開いたのは私だった。 
  
 「私たちも、帰ろう」 
  
 「……そうね」 
34: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:18:56.05 ID:bzATqBdvo
  赤信号を見つめながら、意識は彼女の方に向いていた。 
  
 「風子、意外だと思うだろうけど、唯は案外しっかりしてるの。 
  試験勉強と平行して演芸大会の練習もしてたのよ。 
  あ、演芸大会ってのはギターの発表のことね」 
35: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:19:22.28 ID:bzATqBdvo
 ―――――――――――――――― 
  
  和ちゃんと別れたあと、彼女の言動を気にしていた。 
  やっぱり寂しいのだろうか。 
  唯ちゃんと違う大学へ行くことが。 
36: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:19:57.47 ID:bzATqBdvo
 ―――――――――――――――― 
  
  眠れない。 
  十二時にはベッドに潜りこんだのに、時計の短針は3の数字を指していた。 
  
37: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:20:35.95 ID:bzATqBdvo
  時計の短針は3と4の間、長針は真下を指している。 
  
  ベッドに潜り眠気を待ってみるが、一向に訪れない。 
  このまま寝ずに学校へ行こうか。 
  
38: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:21:15.16 ID:bzATqBdvo
  時刻は午前四時を過ぎ、カーテンの隙間からは空が見えている。 
  空は薄い藍色に染まり、朝の訪れを予感させた。 
  
  無防備に空を見ていた私に、小さな物音が飛び込んだ。 
  泥棒と思ったけど、おそらく新聞配達だろう。 
39: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:21:45.38 ID:bzATqBdvo
  午前五時さすがに眠い。 
  でも今寝たら学校に行けなくなる。 
  いや少しでも寝ておいたほうがいい。 
  徹夜はしたことがある寝なくても大丈夫。 
  そうじゃなくて体に悪いから寝ておいたほうがいい。 
40: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:23:10.25 ID:bzATqBdvo
 ―――――――――――――――― 
  
  結局和ちゃんとはよそよそしいまま、三日が過ぎた。 
  
  そのあいだ私は、夜中に鬱々と考え朝方に眠り、 
41: ◆I38.07w0MY[sage saga]
2012/06/09(土) 21:23:39.66 ID:bzATqBdvo
  昼休みの教室では昼食を終えたあと、みんな思い思いの時間を過ごしている。 
  勉強する子、談笑する子、本を読む子、トランプに興じる子。 
  その一方私は机に座り、置物のようにじっとしていた。 
  
  頭の中に泥が詰まっているような感覚、ただの寝不足だと思うことにした。 
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