4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/06/11(月) 19:38:07.10 ID:mM4hAfqU0
「誰が相手でも釣り合うってのは、保証するけど。
付き合えるかどうかは、相手もある事だから。
姉ちゃんの交友範囲を全て把握してる訳じゃない俺に、保証まではできないよ。
まぁ姉ちゃんなら、大概の相手はイっちゃうと思うけどね」
聡といちごは、未見の関係ではなかった。
以前、いちごが律の家に来た時、二人は一度会っていた。
もしかしたら、聡の意見を参考にできるかもしれない。
律は胸を高鳴らせながら、震える声で言葉を放つ。
「前、いちごって女の子が、うちに来ただろ?
あの、お姫様みたいなサイドロールの子。
あの子なんだけど、聡的には、どう見えた?成功、しそうかな?」
聡は考えるように、瞳の動きを止めて押し黙った。
或いは、いちごを思いだしているのかもしれない。
聡の言葉を待つ間、律は自分の心臓がドラムになったかのように感じていた。
激しく打擲されたドラムを思わせる程に、律の心臓は凄まじい鼓動を轟かせているのだから。
そのせいか、聡が口を開くまでの僅かな時間が、律には酷く長く感じられていた。
「ああ、前に来た、綺麗な人だね。あの人なら、大丈夫だと思うよ。
多分だけど、姉ちゃんに相当な好意を持ってるだろうから。
実はさ、姉ちゃんが料理作る為に席外してる時、俺、色々と訊かれてたんだよね。
姉ちゃんの好みとか、貰って嬉しい物とか。
特に澪ねぇとの関係については、根掘り葉掘り訊かれたよ」
聡の答えに、律は素直に喜ぶ事ができなかった。
期待していた以上の答えではあるのだが、本当の話だろうかと不安にもなった。
もしかしたら律を元気付ける為に、聡が気を使っているのかもしれない。
「その話、ほんと?ホントにホントの話?」
律は上目で聡を見遣りながら、念を押すように訊ねた。
「本当だよ」
「でも、聡。今までそんな事、一言も言ってなかったし」
「ていうか、訊かれなかったし。
それに、姉ちゃんが連れてくる色んな子から訊ねられる、良くある事だったし。
まぁだからこそ、大抵の相手なら大丈夫って、太鼓判押せるんだけどね」
初耳だった。驚いた律は二の句が告げず、黙って聡の顔を見つめた。
対する聡は思慮するように指を顎へと当てながら、言葉を続けてきた。
「それに、いちごさんからは別に口止めはされてなかったけどさ。
こういうのって、言わないのが普通なんじゃないかって、そう思ってた。
でも今になって考えると、言って欲しかったのかもね。
そうやって、遠回しに姉ちゃんに好意を伝えようとした。
だから、敢えて口止めしなかった」
「か、考え過ぎだよ、聡」
そう窘めつつも、律は聡の言葉を信じたかった。
自己に有利な話だけ信じたがる人間の傾向さえ、今は擁護してやりたい気分だった。
その典型的な例が、今の自分なのだから。
それを自覚しても抑えられない程、いちごに対する律の恋慕は深い。
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