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過去ログ - QB「魔法少女達の軌跡」

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276:都市伝説[saga　sage]
2013/03/31(日) 18:00:11.32 ID:6njxlwwu0

「ふぅむ。都市伝説ですか。ありがちですけど、実に興味深いですねぇ」

「そうか？　ありきたりな題材じゃ、面白い脚本作りの役には立たないんじゃないかい？」

「いやいや、そうでもありませんよ。ありがち、ということは普遍性を持っている、ということです。
　つまりはそれだけ人の心を掴みやすいってことですし、背景も割とすんなり理解してもらえます。
　まあ確かに似たような題材を使った作品は溢れているので、埋もれないような出来にするのは一苦労ですけど」

「そんなもんかねぇ……っと、俺はもう行くよ。それじゃあな、嬢ちゃん。楽しかったよ。取材、頑張ってな」

「はい、ありがとうございます。おじさんもお元気でー」

　席を立つ中年男性にふりふりと手を振りつつ、ミュッセは手元の手帳を捲り始めた。

「ふぅむ。面白みのない街かと思いましたが……いや、中々どうして」

　メモを取り始めた最初のページを開いて、ぽつりと呟く。

　彼女がいるのは何の変哲も無い、全国展開しているチェーンの喫茶店だった。

　店の中は有線の音楽が流れている。この街の中ならば、その歌手の曲はどこだって聴けた。

　Mystery O。この街は彼女の声に包まれている。

　そもそもミュッセがこの街にやってきたのは『Mystery O』出生の街であったからだ。

　数年前、世界的な大ブレイクを見せた伝説の歌い手。歳若くして亡くなった事もあり、音楽界ではカリスマ的な扱いをされている。

　だからそれ以外に興味は無かったし、取材も彼女のことを聞くために始めたのだが――

「さすがにこれは異常でしょう。都市伝説――というよりは、怪事件といったほうが正確ってレベルです」

　この街には無数の都市伝説が蔓延っている。

　昼休憩中のリーマンやOLに片っ端から声を掛けて集めた情報。その量は膨大だ。

　必要最低限を書き留めていたはずなのに、それでもメモを丸々数ページ使ってしまった。

　曰く、Mystery Oは亡霊となって彷徨っており、夜な夜な彼女の歌声が街中に響き渡る。

　曰く、この街のどこかに悪魔と仲立ちを成す業者が潜んでおり、魂と引き換えに二つの願い事を叶えてくれる。

　曰く、悪い子は地獄の魔人に灰にされてしまう。

　曰く、とある路地裏を深夜零時に歩けば、死んだはずの人間と再開できる。

　曰く曰く曰く曰く――

　曰くが、あまりにも多すぎる。

　そして、その曰くに対応する事件も。

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