過去ログ - P「お前の夢にはついていけない」律子「……そう」
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(神奈川県)
[saga]
2012/06/24(日) 22:28:01.60 ID:mPrEAa4Zo
二人で歩んできた時間が長いだけに、彼女の性格を熟知している彼は、律子がなかなか浮上できないのではないかと気を揉んでいたのだ。
しかし、彼の予想以上に、律子は気丈に振る舞っている。少なくとも表面上はそうだ。
彼女の脆い一面を知っている彼としてはその裏にあるものを想像して心苦しいが、それを引き起こしたのが自分の決断である以上、
余計な手出しは出来まい。
出来るのは、仕事の上で気遣ってやるくらいのことであった。
「そういえば、涼くんを引き受けるかもしれないってことなら、こっちでのプロデュースは軽めにしておいたほうがいいのか?」
「あはは」
律子は笑って、彼の提案を一蹴する。
「そんなことしたら、それこそ涼に怒られますよ。二組くらいしっかりこなせなきゃ、芸能事務所の代表なんて言えないでしょう? あ、でも、もちろん、
力が足りないところは、チーフにも頼りますよ」
男の片眉が跳ね上がる。驚きをそれだけで留められたのは、気を張っていたからに過ぎない。
繰り返しになるが、彼は律子のことをよく知っている。
思慮深そうでいて案外感情に引きずられやすいことも、よく落ち込み、よく調子に乗ることも。
前半の発言を聞けば、テンションが高い自信満々な時の律子のように思えるが、その一方で、頼ると言っているのも本気に聞こえる。
彼の知る律子の両面が柔軟に発揮されている。そのことに、チーフは驚嘆の念を抱かずにはいられなかった。
「765のアイドルにも全力、涼にも全力で行きます」
彼女を育てた男の感慨など気にした風もなく、律子は続けている。
「トップ、目指してますから」
彼女は、爽やかな笑顔でそう言い切った。
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