過去ログ - P「お前の夢にはついていけない」律子「……そう」
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34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/06/24(日) 22:38:04.85 ID:mPrEAa4Zo
「あ、あの、律子さん」
「なんですか、あずささん。あ、あずささんはこれまで通りでいいんですよね」
「え、ええ。それはもちろん。そうじゃなくてですね……」

 ちらり、と、しかし、少々大げさに、あずさは美希のほうを見やる。それは、律子の視線を誘導するためのものであったが、彼女はあずさの
顔をじっと見つめたまま、眼鏡の奥の瞳を動かさない。

 一方で、美希のほうはぷるぷると小刻みに震え始めていた。

「なんです?」
「あの……えっと……」

 あずさの視線は、震える美希と、それに気づいていない律子の間を何度も往復する。しかし、律子は彼女から視線を外そうとしない。

「あ、ちょっと待ってて下さい、あずささん。星井さんへの連絡を終えてからでいいですか」

 おそらくは、それが最後の一押しであった。
 あずさに対して、余所余所しく美希の呼び名を告げた瞬間が。

「あのですね、星井さん。次のシーンなんですけど、監督が言うには星井さんが……って、ちょっと! どうしたの、美希!」
「律子が……律子が……」

 律子が監督から伝えられた連絡事項を読み上げようと向きを変えたときには、既にぽろぽろと大粒の涙が美希の頬を滑り落ちている。
 そして、異様な気配に彼女が顔をあげた時、くしゃりとその顔が歪んだ。

「うわぁあああん!」

 結局、赤ん坊のように泣き続ける美希をなだめるには、三日間の手作りおにぎり弁当を約束せざるを得なかった律子であった。


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