過去ログ - P「お前の夢にはついていけない」律子「……そう」
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(神奈川県)
[saga]
2012/07/14(土) 17:47:49.74 ID:5zWTHaLqo
だが、一転、彼は全ての表情を消すと、空になったグラスを手の中で玩ぶ。
「そう……俺たちは、二人三脚のパートナーなんです。けして、師弟じゃない」
「師弟じゃない、ですか」
しばし、沈黙が流れる。男がギムレットを注文し、それがやってきたところで、小鳥はようやく口を開いた。
「関係性は変わらざるを得なかった、とプロデューサーさんは思ってるんですか? 律子さんが用意した場所では」
「わかりません」
男はぎゅっと目を瞑った。あり得たはずの未来を幻視するのを避けるかのように。
「いまでも、どうすべきだったかはわかりません」
彼女の提案を受け入れていれば、彼は経営者として、律子とパートナーを続けていられただろうか。
あるいは、アイドルという立場を離れた彼女と、公私ともに渡るパートナーになることもありえたのだろうか。
わからない。
全ては仮定であり、もはや取り返しのつかない選択の彼方だ。
そして、踏み出せなかったのは、彼自身なのだから。
「ただ……」
「ただ?」
聞き返す小鳥に、男は目を開き、向き直る。力なく微笑む彼の瞳に複雑な色が揺れていた。
「いまや関係性は明らかに変わってしまいましたね。俺は、もう、あいつのパートナーじゃない」
そう認めたとき、自分の中からなにかが抜けていくような、そんな喪失感を彼は味わっていた。
光量を抑えた店内に、優しいピアノの音が流れていく。
男と女はその旋律に耳を傾け、沈黙を守った。
第四話 終
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