49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/23(月) 23:37:58.57 ID:AOwqRaFu0
二本目の煙草をくわえるころには、小雨が降り出していた。
カグラは、店の片づけが残っているらしく、さっさと立ち去ってしまっている。
これだから雨はいやだ。湿気のせいで煙草がダメになったらどうしてくれる。
空を飛ばなくなったのはいつからだっただろうか。
俺の理想をすべて凝縮して、それに人の形を取らせたような少女が、かつていた。
いたんだ。
思い出の中にしかいないけれど。
彼女の手のぬくもりは、どこまでいっても俺から離れずにいる。それがある限り、俺は自分がアマタ・ソラだと胸を張って言える。
結局のところ、俺が俺である理由など、彼女に寄りかかっていた脆弱なものだったのだ。
もう俺に空は飛べない。
一緒に飛んでくれる人が、俺が抱きかかえるべき人がいないから。
俺一人だったら、成層圏を突き破って宇宙にまで行ってしまう。
ブーツに入れていた錘が急に懐かしくなった。
完全に能力の制御ができる今では不要ではあるが、確かに、あれがあったからこそ俺は能力の存在を感じ取れた。
もう俺は飛べない。
飛ばないんだ。
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