22:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:30:16.21 ID:n3CjMYIK0
酔漢やホステスでごった返す路地を通り抜け、ごみごみした雑居ビルとケバケバしいピンクのネオンに囲まれた酒場<カサブランカ>に四人が入った。
タバコの煙と安物の香水の匂いが充満する店内──端にある一番奥まったテーブル席に四人は座った。
「コブラ、あの化け物は一体何者だ」
最初に口を開いたのは、ル・シャッコだった。
「あいつはクリスタルボーイ、海賊ギルドの最高幹部で冷酷な殺し屋でもある。そして俺から左腕を奪った男さ」
コブラが左腕を撫でてみせる。そして、もっともと前置きをおくと最後に台詞を付け加えた。
「あいつから生身の身体を奪ったのは、この俺だがな」
葉巻を唇に差し、コブラが指を鳴らしてホステスに四人分のビールを頼む。
キリコとメロウリンクは沈黙したままだった。
脇を通りかかったホステスのヒップを目で追いながら、コブラが鼻の下を伸ばす。
頬をだらしなく弛緩させるコブラの横顔に、メロウリンクは怪訝そうな表情を浮かべた。
つい先ほどまで敵と命のやりとりをしていた男とは到底考えられなかった。
メロウリングが今まであったどのような人物にも、コブラのようなタイプはいなかったからだ。
メロウリンクはある種の苛立ちを覚えた。コブラに尻を撫でられたホステスが、艶めかしい嬌声をあげる。
眉間に皺を作るメロウリンク、ホステスを口説くコブラ──そんなふたりを見て、キリコが薄笑いを唇に浮かべた。
いつもの事だからだ。
シャッコが表情を変えずに、ホステスから受け取ったビールに口をつける。
「なあ、いいだろう。一晩だけさ」
「うーん、どうしよっかな」
ホステスがざっくりと開いた胸元のドレスをうねうねと揺らした。コブラの視線が胸元に釘付けになる。
「何にもしないって、ベッドの上以外じゃな。それにしても可愛いオッパイだこと」
「ふふ、ありがとう」
「こっちはどうなってんのかね」
丈の短いタイトスカートに手を忍ばせ、コブラがホステスの太股を触れるか触れないかの指使いでソフトに撫でる。
「あん、どこ触ってるのよ」
ホステスが、スカートに入ったコブラの手の甲をぎゅっと抓った。
「おお、いてて、酷いなあ、君もその気だったんじゃないのか?」
わざと痛がるような素振りをしながら、抓られて赤くなった部分にコブラがふうふうと息を吹きかける。
「まあね、お触りも凄く上手だし、他の男達と違って、あなたって垢抜けてる感じね。でも、今はお仕事中だから駄目よ。だから……」
ホステスがマッチにペンを走らせ、コブラの掌に握らせる。
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