3:S・エルロイ
2012/06/30(土) 22:12:49.55 ID:n3CjMYIK0
愛嬌のある顔ではあるが、お世辞にもハンサムとはいえない。
「おいおい、俺を覚えてないのか。冷たいなあ」
男が親しい友人に話しかけるように、バイケンに向かって気さくに声をかける。
記憶の糸を手繰り寄せてはみたが、やはり身に覚えはない。なるほど、銀河パトロールの犬ってとこか。
恐らくは犯罪現場を押さえる為に、こちらをつけ回していたのだろう。それなら納得がいく。
「兄ちゃん、人殺しを見られたとあっちゃ、生かしておけねえ。悪いがここで死んでもらうぜ」
バイケンが引き金を引いた。路地裏に閃光が走った。
闇夜を引き裂く銃声──死の間際、バイケンの瞳に黒光りする男の左腕が焼きついた。
鈍色に輝いた紡錘形のフィルム──それはまるで死神の鎌を彷彿とさせた。
「サ、サイコガン……」
バイケンの瞳から命の灯火が、ふっと消えうせた。前のめりに崩れ落ちる。
サイコガン──最後に遺したその言葉が、バイケンの墓碑銘となった。
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