過去ログ - 天井亜雄「今は……いつなんだ?」
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970: ◆WWqRalPcWM[saga]
2012/07/25(水) 13:41:11.90 ID:/UdDDZMM0
木山「急なアポイントで申し訳ないね」
地味な色のロングコートの下に、さらに木山は白衣を羽織っていた。
天井とて服装にそこまで拘りは無いが、それはありえないだろうと思う。
彼女は何のために着てきたのか白衣を脱いで応接用の椅子に掛け、その下のハイネックの裾を捲ろうとする。
天井「脱ぐな」
木山「しかしこの研究室は暑過ぎる。エアコンの温度は下げられないのかい」
天井「残念ながら温度は集中管理だ、オフにはできるが寒いぞ。だが脱ぐな」
むぅ、と不満そうな研究者の前に、ティパックの紅茶を出す。
無頓着な印象と反し向こうの研究所では様々な種類の飲み物を出されるため、一応の礼儀である。
自身では気にしたことが無いパッケージにはダージリンと書かれていた。
彼女はストレートのまま、ゆったりと口を付ける。
木山「ふぅ。……そうピリピリしないでくれ。用はあるが、緊急事態ではないよ」
天井「しかしメールで伝えるには憚られるのだろう?」
ことり、カップを置いた木山はこちらを見る。
視線の下の隈は以前よりも濃いような気がした。
向こうもなかなか治療が進んでいないのか。
木山「――あと一歩までは来たのだが。ここに到って、第一位の彼が言っていた『足りないパラメータ』が分かったのだよ」
頷いて、続けてもらう。
木山「『体晶のファーストサンプル』、あるいは『木原幻生の実験記録』。どちらかに覚えがあったりはしないかな」
天井「初耳だ。そもそも体晶とは何だ」
木山「そうか。いや、駄目で元々のつもりだったから気にしないでほしい。体晶というのは――」
能力者の意図的な暴走誘発、採取された脳内物質。
その結晶は他の能力者にも暴走を引き起こす。
一般の視点からすれば非人道的だろうが、この都市ならあり得ると思わせる実験の産物だった。
木山「生徒達はそれを投与されていたことが分かってね。ただ、原因となった体晶のデータが欠けている。
これを相殺しないと、たとえ目を醒ましても暴走したままになってしまうんだ」
天井「それで、サンプルか実験記録、か」
木山「あぁ。貴方とは分野も何も違うからね、敢えて探してくれとは言わない。
もしどこかで関係のありそうなことを耳にしたら教えて欲しいんだよ」
伝手も何も無いことを理解の上だろう。
木山は特に強要もしない。
もっとも最近は要求を通すのに弱みをちらつかされたりはしていないのだが。
ともあれこちらも紅茶を一口含み、了承した。
木山「それから、実験記録が見付かった後のために準備しておきたいことがあってね。
そのために一、二ヶ月ほど忙しくなる。その間、貴方を手伝うのが難しくなるが許してくれ」
青髪少年の患者への能力適用に手間取っている現状では、どうせ頼めることも少ない。
木山には木山の目的があり、それを優先するのも彼女の自由だろう。
だが何となく引っ掛かるのは。
天井「それは問題無いが――、ここにきてまた秘密主義か」
「準備」の内容について教える義務はそもそも無いのだが。
どうしてか強いて伏せているように感じたのだ。
木山「危険なことではないよ、前に言ったようにテロリズムに染まった訳でもない」
椅子にゆったりと掛けた研究者は、ぼんやりと笑みを浮かべた。
>>+1
木山の件について、何かするか
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