過去ログ - 梓「サナララ」
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109:猫宮[saga]
2012/11/18(日) 18:18:41.27 ID:k9KWVTOk0
「ホントはね……、梓ちゃんが何か悩んでるのは分かってたんだ。
多分、音楽の事で悩んでるんだろうな、って事くらいは何となくね……。
この前、急にギターを弾くのをやめたのもそうだし、
実はね、私、その日の夜に、梓ちゃんがギターを持って何処かに行ってたのも気付いてたの。
それで梓ちゃんが音楽……、ギターの事で何かを悩んでるんだ、って思ったんだよ。

でもね……、どうしていいか分からなかったんだ。
梓ちゃんの悩みに私が勝手に踏み込んでいいのか分からなくて……。
『ナビゲーター』の私がどれくらい手助けしていいのか分からなくて……。
それで私、ずっと考えてたの。
どうする事が梓ちゃんにとって一番いいのかなって。
それをずっとずっと考えてたんだ……」


憂ちゃんに悩みに気付かれていた。
その事実に私はあんまり驚かなかった。
よく思い出さなくても、私の行動は色々不自然だったと思う。
鋭い所がある憂ちゃんなら、私の考えていた事に気付いててもおかしくない。
それから、「でも……」と憂ちゃんが続け、私はその言葉にまた耳を傾ける。


「私、間違っちゃったみたいだね、梓ちゃん……。
私ね、ずっと梓ちゃんの悩みの事を考えてて、一つ思った事があるんだ。
梓ちゃんは今、ギターの事で悩んでる。
だったら、その悩みを晴らすのもギターじゃないのかなって。
どんなに悩む事があっても、好きな事をすれば元気になれるって単純に考えちゃったの。

でも、それは私の勝手な思い込みだったんだ、って今気付いたの。
そんなの単純過ぎたよね……。私の勝手な思い込みだったよね……。
本当は梓ちゃんとちゃんと話し合わなきゃいけない事だったのに。
自分一人で考えてても、いい答えなんて出るはずなかったのに。
だから、本当にごめんなさい、梓ちゃん……」


憂ちゃんが辛そうな声色で、その想いを私に伝える。
それは多分、憂ちゃんが私にほとんど見せた事が無い弱さだった。
憂ちゃんは色んな才能を持っていて、私には届かない強さもたくさん持ってる。
でも、何もかもを完璧にこなせてる、ってわけじゃないんだよね……。
何でも出来るように見えるけど、憂ちゃんも私と同い年の中学生なんだから……。
憂ちゃんだって悩んで、考えて、一生懸命生きている。
失敗しちゃう事だってある。
分かってる……。
分かってるよ、そんな事……。
分かってるから、辛いんじゃない……。

また私の両目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
今度の涙は悲しかったから流れたものじゃなかった。
辛かったから流れた涙でもなかった。
情けなくて……、自分の無力が情けなくて流れた涙だった。

憂ちゃんには才能がある。
でも、才能に頼り切ってるわけじゃないのは、傍に居て私にもよく分かった。
ううん、才能云々より、そもそもの努力を欠かさないタイプだって事も分かる。
憂ちゃんの優しさや思いやりは才能で身に着けたものなんかじゃない。
憂ちゃんは才能があって努力もしてて、誰にでも優しい思いやりを持ってる。
私なんかじゃどうやったって届かない物をたくさん持ってる。
それを羨ましく思うだけの自分が情けなくて、悔しかった。


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