過去ログ - 梓「サナララ」
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110:猫宮[saga]
2012/11/18(日) 18:19:11.73 ID:k9KWVTOk0
「どうして貴方は……、そんなに優しいの……?」


何度言ったか、何度思ったか分からない言葉を私は口にする。
結局、私の疑問はそれに尽きるのかもしれない。
自分の事しか考えられてない私が思う一番の疑問。
私は才能だけじゃなくて、誰かへの思いやりを持てる憂ちゃんが眩しかったんだ、きっと。
私はあの子と夢を見られなくなった事が悲しかった。
でも、一番悲しかったのは、あの子の夢を応援出来ない自分が心の中に居た事だった。
あの子は音楽を始めた当初から、私の夢に付き合ってくれてる所があった。
私が望むから、私と組んで音楽を演奏してくれていたんだよね、あの子は。
私の夢を叶えてくれるために。
今ならそれが分かる気がする。
今度は私があの子の夢を応援する番なのに、心の底からそれが出来ない私が居る。
それどころか、悲しくて辛くて泣いてしまって、憂ちゃんに八つ当たりしてしまう私が居る。
それこそ私が本当に悔しくて情けなくて悲しい事だったんだと思う。

それを言ってしまうと、そもそも私は最初に何を望んでたんだろう?
いい曲を弾けるようになる事?
音楽で有名になる事?
それとも、あの子と音楽を続ける事?
音楽の才能を手に入れて、あの子と音楽を続けられるようになったとして、その後に私は何がしたいの?
……分からない。
ずっと悩んでいた事のはずなのに、いつの間にかそれが分からなくなってる。
自分が何で悩んでいたのかを。

不意に、憂ちゃんが私に一つの答えを届けてくれた。


「私は別に優しくなんかないんだよ、梓ちゃん」


「えっ……?」


私は思わず変な声を漏らしてしまっていた。
だって、こんなの意外な言葉過ぎるよ……。
もっと意外だったのは、そう言った憂ちゃんの表情が悲しそうな苦笑だった事だった。
謙遜なんかじゃないって事は、その表情を見ただけでよく分かった。
どうも憂ちゃんは本当に自分の事を優しくなんかないと思っているらしい。
私の心臓がどんどん妙な速度で鼓動を速めていく。
どういう事なの?
こんなに周りの人の事を考える憂ちゃんが優しくないだなんて、そんなの変だよ……。
それだけは絶対におかしいよ……。
気が付けば、私の涙はいつの間にか止まっていた。
泣くよりも先に、その憂ちゃんの言葉だけは否定したかったからだと思う。
私は憂ちゃんの肩に手を置いて、口早に捲し立てるみたいに言った。


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