120:猫宮[saga]
2012/12/12(水) 19:05:12.67 ID:re/6Yyqf0
言葉を止め、私はあの子の家で見つけた手紙の事を思い出す。
『わたしじゃ、あずさの足をひっぱっちゃう』
『ホントにごめん』
それは私達の、ううん、私の夢の終わりを告げる言葉。
思い出すだけで息が苦しくなって、胸が激しく痛む。
また大声で泣き出しそうになってしまう。
でも、駄目。
もう泣いたら駄目だよ、私。
これ以上、何も出来ないなんて駄目なんだから……!
そう思うのに、想いを言葉に出来ない。
口を開くとまた大声で泣き出しそうになっちゃってる。
何も、出来なくなる。
もう……、何やってるのよ、私は……。
でも、もう私はまた涙を……。
瞬間、私の頭に置かれた温かさがまた動くのを感じた。
優しく包み込まれるように頭を撫でられる。
憂ちゃんが私の頭を撫でてくれる。
「いい子、いい子……」
赤ちゃんをあやすみたいに憂ちゃんが私の頭を撫で続ける。
憂ちゃんの温かさと優しさが、私の頭から全身に広がっていく。
それだけで私の涙は何処かに飛んで行ってしまった。
やっぱり私はまだまだ子供なんだろう。
こんな事で涙が出ちゃうくらい嬉しくなっちゃうなんて……。
って、折角涙が引っ込んだのに、別の理由で泣いてちゃ意味が無いよね。
私は一息吐いてから、何とか言葉を出したけど、
それは私が言おうとしてた事とは全然違った言葉だった。
「もう……、そんなに子供扱いしないでよ、憂ちゃん……」
ああ……、私ったら何を余計な憎まれ口を叩いちゃってるのよ……。
憂ちゃんは私のためを思ってやってくれてる事なのに……。
でも、照れ臭いのは確かだし、ああ、もう……!
そうして、私は憂ちゃんの胸の中で自分の顔が熱くなるのを感じていたけど、
憂ちゃんは気を悪くした風でもなく、私の頭を撫でる手を止めてから言ってくれた。
「ごめんね、梓ちゃん。
つい自分がされると落ち着く事を梓ちゃんにしちゃったみたい。
私が悲しい時や寂しい時にね、お姉ちゃん、私にいい子いい子してくれるんだよ」
「唯さんが憂ちゃんに……?」
「うん、そうなんだよ。
私って結構泣き虫だから、お姉ちゃんによく慰めてもらってたの。
そのせいなのかな?
今でもお姉ちゃんにいい子いい子されるとすっごく落ち着くんだ。
梓ちゃんは落ち着かない?」
「落ち着かないわけじゃ……ないけど……」
「よかった」
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