129:猫宮[saga]
2012/12/15(土) 19:07:41.79 ID:UkOXPRkn0
もう……。
憂ちゃんってば、どうしてこんなに優しいのかなあ……。
勿論、その理由は私にも分かりかけてる。
大好きなお姉さんの唯さんに近付くためなんだ。
憂ちゃんの優しさは、きっと唯さんとの生活の中で培われたものなんだよね。
だから、私は明日、今まで掛けていた沢山の色眼鏡を外して、
心の底から素直に唯さん達の軽音楽部の見学に行きたいと思う。
そして、出来る事なら、学園祭のライブまで見届けて……。
そこまで考えた瞬間、私は一つ大変な事に気付いてしまった。
他でもない唯さん達の学園祭のライブの成否の事だ。
唯さんが声を嗄らしてしまって、代理のボーカルの澪さんも何だか頼りない。
なのに、律さんと紬さんには焦ってる様子も無くて、このままだとライブの失敗は目に見えてる。
うう……、あの軽音楽部の皆さんのライブの失敗は見たくないなあ……。
それでも、今日まで心の何処かで少し安心もしていた。
憂ちゃんが『一生に一度のお願い』で唯さんの幸せを願ったはず、って今日まで思ってたから。
それなら神様の何かの計らいで、ライブ当日に唯さんの嗄れた声が都合よく治ったりするんじゃ……。
なんて、我ながら都合のいい期待をしてたんだよね。
だけど、憂ちゃんの言葉が本当なら、
憂ちゃんは唯さんの幸せを『お願い』にしていないらしい。
こうなると私のしていた期待は完全にお門違いになってしまう。
そもそも『お願い』自体をしてないんだから、期待するだけ全くの無駄になっちゃうわけだし。
だとしたら、ライブが失敗する可能性の方がずっと大きいじゃない……!
湧き上がる不安に耐え切れず、
私がそれを口にすると憂ちゃんは笑顔で応じてくれた。
「お姉ちゃん達を信じてあげて、梓ちゃん。
お姉ちゃん、ライブの成功のために頑張ってるんだから、きっと大丈夫だよ。
それにね、もしもライブが失敗しちゃっても、お姉ちゃん達はそれでいいんだと思うな」
失敗しても構わない……?
あの軽音楽部の人達の失敗なんて、私は見たくないよ……。
今の私にはまだ憂ちゃんのその言葉の意味は分かりそうにないな……。
でも、唯さん達を信じ切ってる、その憂ちゃんの笑顔だけは私の胸に強く残った。
これは何としても軽音楽部の皆さんのライブを見届けなきゃいけないよね。
もしかしたら、そこにこそ私の『お願い』の最後のきっかけがあるかもしれないから……。
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