過去ログ - 梓「サナララ」
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148:猫宮[saga]
2013/01/21(月) 18:54:01.88 ID:qJfGpQK/0
「あ……、あれっ……?」


憂ちゃんのポニーテールを結び終わった瞬間、私はつい呻くみたいに言ってしまっていた。
何かが……、違ってる気がする……。
いや、勿論、ポニーテールの位置と形なんだけどね……。
毎日見ていた憂ちゃんのポニーテールを再現したつもりだったのに、よく見なくてもかなりずれていた。
おかしいなあ……、何をやってるのよ、私……。
でも、何となく納得もしていた。
自分の髪はともかく、私は誰かの髪を結んだ事があんまり無い。
あの子はいつも髪が短めだったから、逆に私の髪で遊ばれるのが日常だったんだよね。
考えてみたら、誰かの髪を結ぶのなんて、お母さんの髪を結ばせてもらった時以来じゃないかな?

……って、そんな言い訳はどうでもよかった。
流石にこんな失敗してしまった髪型じゃ、憂ちゃんに申し訳ないにも程がある。
「ごめん、憂ちゃん。結び直すね」って言って、
私がリボンに手を掛けると、憂ちゃんは大きく首を振って笑顔を私に向けてくれた。


「ううん、これでいいよ、梓ちゃん」


「え、でも、こんなんじゃ……」


「梓ちゃんが私の事を思って結んでくれたんだもん。
勿体無くて解けないよ。
だからね、これでいいの。
ううん、私はこれがいいなあ……」


その憂ちゃんの笑顔にはお世辞も何も含まれてないように見えた。
本気で私の失敗してしまったこの髪形を、いいと思ってくれてるんだろう。
勿論、とても申し訳ない気分はなったけど、でも、同時に嬉しくもあった。
憂ちゃんの笑顔には、人の気持ちを優しくさせてくれる力があるんだよね……。
きっとお姉さんの唯さん譲りの不思議な笑顔……。
今回は仕方ないけど、次こそは憂ちゃんの髪型をちゃんと結んであげたいな。
いくら失敗したって、今度こそは……。
私は「ありがと」とだけ言ってから、少しだけ話を変える事にした。


「ねえ、憂ちゃん?」


「どうしたの?」


「憂ちゃんも緊張……してるんだね……」


「勿論だよ、梓ちゃん。
お姉ちゃんの初めてのライブだし、律さん達にも頑張ってほしいもん。
最高のライブにして、最高の思い出を作ってもらいたいもん。
だからね、私……、すっごくドキドキしてるんだ」


「うん、そうだよね。
私も軽音楽部の皆さんには頑張ってほしいもん。
中々練習を始めない困った部の人達だけどね、
お茶ばっかりしてる不思議な部の人達だけどね……、
でも、軽音楽部の皆さんには、このライブを絶対成功させてほしいんだ。
あの人達の笑顔が……、見たい……んだよね……」


それが私の気持ち。
ずっとあの軽音楽部を見てきて、辿り着けた単純な気持ち。
私は結局、あの人達に憧れてたんだと思う。
音楽の腕前とかじゃなくて、お茶ばかり飲んでるからでもなくて、
あの仲の良い仲間同士の皆さんの姿が眩しかった。すっごく憧れたんだ。
だから、皆さんには最高のライブを成功させてほしい。
失敗なんてしてほしくない。
でも、憂ちゃんは笑顔で首を振った。


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