162:猫宮
2013/02/04(月) 18:36:54.05 ID:44bsrsPH0
「……ん?」
軽音楽部の部室に向かう階段の踊り場。
律さんが不思議そうに首を傾げて、部室の扉の方を見た。
私と憂ちゃんは一度顔を見合わせた後、律さんの視線を追ってみる。
「……お姉ちゃん?」
憂ちゃんが小さく呟いてから首を傾げた。
憂ちゃんの言う通り、部室の扉の前では唯さんが一人で佇んでいた。
扉のガラスの部分から、部室の中を覗き込んでる……のかな?
唯さんが扉の前に居るって事は、部室の中には澪さんが居るんだろうけど……。
「何やってんだ?」
「しーっ!」
律さんが訊ねると、唯さんが口元に左手の人差し指を立てた。
いつの間にか律さんと紬さんが、唯さんの隣にまで歩み寄っていたみたい。
律さん達に続いて、私達も早足で部室の扉の前に辿り着く。
手を伸ばせば律さん達に届く距離。
こんなに近付いても、律さん達は私達に気付く様子は全然無かった。
『石ころ帽子』の状態とは言っても、やっぱりちょっと寂しいな……。
って、今はそんな事なんかどうでもいいよね。
律さん達が唯さんに示されるままに、扉のガラスを覗き込む。
私と憂ちゃんも少しだけ空いたガラスのスペースから、中を覗き込んでみた。
「澪さん……」
私の言葉は憂ちゃんにしか届かないはずだったけど、
まるで私の言葉が届いてるかのように、律さんと紬さんがタイミングよく微笑んだ。
澪さんの事が羨ましくなるくらい、優しい優しい律さんと紬さんの微笑み……。
そっか……。
やっぱり、そういう事だったんだよね……。
部室の中では、澪さんが一人で緊張した面持ちを浮かべていた。
でも、ただ怖がって緊張してるだけじゃない。
胸の前で手を握って、素敵な歌声を響かせていた。
澪さんに出来る精一杯の努力をしていたんだ。
「ずっと……練習してたんだな……」
「うん……」
律さんが小さく呟いて、紬さんが頷いた。
大切な仲間を見つめる優しい表情を浮かべたままで。
勿論、唯さんも嬉しそうな微笑みを浮かべてる。
仲間の……、澪さんの頑張りに感激してるんだよね、三人とも。
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