17:猫宮[saga]
2012/07/29(日) 18:12:21.81 ID:G1XGi7PY0
「『一生に一度のチャンス』って言うのはね、
名前の通り一生に一度だけ誰にでも来るチャンスの事なの。
神様なのか仏様なのか分からないけど、
そんな誰かに何でも一つだけ好きなお願いを叶えてもらえるシステムなんだよ」
「それは……、何と言うか……。
こう言うのも悪い気がするけど、凄く胡散臭いね……」
「あはっ、こう言われてもすぐには信じられないよね。
私も最初はそうだったもん」
「平沢さんも……?」
「うん、そうなんだよ。
私ね、もうチャンスシステムにお願いを叶えてもらってるんだ。
実はお願いを叶えてもらったら、一度だけ果たさないといけない義務が発生するの。
それがね、自分が『ナビゲーター』になって、
次の人に『チャンス』を伝えて、導いてあげる事なんだよ」
「次の『チャンス』って事は……、
平沢さんも前に他の『ナビゲーター』の人に導いてもらったって事なの?
いや、まだ『ナビゲーター』って言うのが、どんな役割なのかは分からないけど……」
私が横目に訊ねると、平沢さんは目を細めて軽く頷いた。
楽しい事を思い出しているような、
でも、辛い事も一緒に思い出しているような、そんな複雑な表情だった。
数秒くらい経ってから、平沢さんは私の方に顔を向け直して、また微笑んでくれた。
「うん、私も前の『ナビゲーター』の人にお世話になったんだ。
年上のお姉さんだったんだけど、元気で、前向きで、楽しい人で、
どんなお願いを叶えてもらったらいいのか分からない私のアドバイスもしてくれて……、
本当に……、素敵な人だったなあ……」
平沢さんのその表情はとても輝いているように見えた。
楽しさも辛さも全部抱えたからこそ浮かべられる表情……、そんな気にさせられる。
いいなあ、と思った。
今の私には多分、平沢さんみたいな表情を浮かべる事は出来そうにない。
いつかは私も平沢さんみたいに微笑む事が出来るんだろうか……?
それはまだ、分からない。
そうして少し私が黙り込んでいたのを別の意味に捉えたのか、
平沢さんが困ったような苦笑に表情を変えて、ゆっくりと首を傾げた。
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