191:猫宮[saga]
2013/03/02(土) 18:40:50.19 ID:8FQpE2Qb0
「じゃあ、ちょっとだけ休憩しちゃおうよ、憂ちゃん。
ちょっと早いけど、お昼ごはんにしちゃおう。
お腹が空いたら練習にも支障が出ちゃうもんね」
「そうだよね。
だったら、今から私が準備を……」
言い様、立ち上がろうとした憂ちゃんの肩に私は手を置いた。
そのまま私の方が立ち上がって、軽く微笑み掛ける。
「いいよ、憂ちゃんはゆっくり練習してて。
いつも準備してくれてたんだし、今日くらいは私にごはんの準備をさせてよ」
「えっ、でも……」
「あっ、もしかして、私にごはんが作れるか心配してるの?
大丈夫だって。
確かに今まで憂ちゃんにごはんの用意をしてもらってたけど、
私だって料理の本を見ながらだったらそれなりのごはんを作れるんだから。
……信用出来ない?」
「そんな事、無いけど……」
「だったら、任せてって」
精一杯の自信に満ちた表情を憂ちゃんに見せる。
憂ちゃんは私に悪いと思ったのかちょっと迷ってたけど、
私の厚意を無視するのも申し訳無いって思ってくれたんだろう。
普段の優しい笑顔に戻って、肩に置いた私の手にその手を重ねてくれた。
「それじゃあ、ごはんの用意をお願いしてもいい?」
「うん、任せてよ。
ちゃちゃっと料理してくるから、憂ちゃんは……」
「うん、無理せず、一生懸命に練習しておくね」
「分かればよろしい」
私が軽口を叩いて、二人して笑い合う。
最後の一日なのに危機感が無さ過ぎる気がしないでもない。
でも、それでよかったんだと思う。
今日で最後だからって、憂ちゃんとの関係を劇的に変えたいわけじゃないもんね。
私は今まで見せてくれた憂ちゃんの優しさに惹かれてるんだもん。
だから、私も今まで憂ちゃんが信じてくれてた私のままで何かを成し遂げたいんだ。
結果、あんまり出来の良くないセッションになっちゃったって、それはそれで私は満足だ。
……なんて考えてはみるけど、実はあんまり心配はしてなかったりするんだよね。
私のずっと考えてた通り、憂ちゃんの技巧がとても凄かったから。
天才なのかどうかはともかく、少なくとも私よりはずっと筋がいい。
流石に今まで積み重ねてきた私の数年に一日で辿り着くほどじゃないけど、
二年……、ううん、一年くらい毎日練習すれば、私の実力なんて超えちゃうんじゃないかな。
悔しくないって言ったら嘘になる。
だけど、そんな事よりも今は、憂ちゃんの技巧に感心しちゃう気持ちの方が強かった。
基本を教えてる私の方が勉強になっちゃうくらいなんだよね。
そんなやり方があったんだ、って基本を再確認出来る。
それは私にとっても凄くためになる事だった。
うん。憂ちゃんって、本当に凄い子だなあ……。
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