25:猫宮[saga]
2012/08/02(木) 18:53:37.27 ID:SOU6xWSH0
ここに居る。
平沢さんは確かにここに居る。
奇妙な現象ではあるけど、奇妙な縁ではあるけど、
平沢さんは柔らかい笑顔を浮かべて、ここに居てくれてるんだ。
私のお願いを叶えてくれるために。
気が付けば、私は平沢さんの言葉の全てを信じていた。
ううん、むしろ『チャンスシステム』の存在が嘘でも構わなかった。
不思議と私の心を惹き付ける。
平沢さんにはそんな魅力があるんだと思う。
「それにしても……」
私は微笑みながら言葉にしていた。
微笑みながら誰かと話すなんてどれくらいぶりだろう。
学校でクラスメイトと話す事はあるけど、あの日以来、笑う事は少なくなってた気がする。
でも、今、私は笑えてる。とりあえず、笑えてる。
「どうしたの、梓ちゃん?」
私の顔を覗き込みながら、平沢さんが首を傾げる。
その視線は真剣そのものだった。
私が『チャンスシステム』の事を完全に理解するまで、
丁寧に確実に真摯に私と向き合ってくれる……、そんな視線だった。
でも、私はもう平沢さんの言葉を信じてたし、
平沢さんに訊ねようと思っていたのはもっとどうでもいい事だ。
「うん、『チャンスシステム』って変なシステムだなー、って思って。
『ナビゲーター』の人がリレー方式で『一生に一度のチャンス』の事を次の人に伝える。
まだちょっと胡散臭い気はするけど、システムとしては理に適ってるって思うよ?
でもね、そのために『ナビゲーター』の人の姿が次の人以外の人間から見えなくなる、
って現象の意味が分からないんだよね」
「あ、詳しく言うとちょっと違うみたいだよ、梓ちゃん。
『対象者』以外の人の目に写ってはいるけど、
その誰からも気にされないくらい存在感が薄くなってる状態らしいの。
梓ちゃんは『ドラえもん』の『石ころ帽子』ってひみつ道具知ってる?
それを被ると石ころみたいに誰にも気にされなくなるって、ひみつ道具。
そんな感じになってるみたいなんだ」
「そうなんだ。
でも、どっちにしても、変なシステムだよね。
お願いを叶えてあげるなら、『ナビゲーター』をそんな状態にする必要無いでしょ?
……無理矢理理由を考えれば、
『チャンスシステム』をどうしても信じられない人のために、
『ナビゲーター』を非現実的な存在にして、無理矢理信じさせるため……とか?」
「あははっ、それもあるかもしれないね。
梓ちゃんって想像力が豊かなんだね。
でも、『ナビゲータ』の存在感が薄くなるのは、それが一番の理由じゃないみたい。
それはね、きっと……」
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