35:猫宮[saga]
2012/08/12(日) 18:30:03.29 ID:c6PyoOrH0
平沢さんの言葉に頷いてみたけど、別に何かが変わったようには思えなかった。
知りたかった事に対する私の知識が急激に増えたって事も無さそうだった。
家に帰ったら私の知りたかったをまとめた本でも置いてあるのかな……?
それもそれで間抜けな光景だなあ……。
まあ、どんな方法でもお願いが叶ったのなら助かるんだけど……。
それを確かめるためにも家に戻った方がいいのかな?
そう考えた瞬間、私はそれに気付いた。
耳に聞こえて来ていた音に異変が起きてるって事に。
私はその音の方向に視線を向ける。
私の視線の先では澪さんが律さんに見守られて、エアベースを弾いている。
ううん、エアベースだけならさっきまでも恥ずかしそうに弾いていたんだけど、
今は急に歌まで歌い始めていて、明らかに伸び伸びとエアベースを演じるようになっていた。
「お、急にエアベースのノリがよくなったなー、澪。
やっぱり観客が居ないと真の実力が出せるってやつか?
ミュージシャンとしてはそれもどうかと思うけどさ」
律さんがからかうみたいに言うと、澪さんが少し恥ずかしそうに苦笑した。
ついさっきまでには見た事が無い、緊張から解放された苦笑だった。
「それを言わないでくれよ、律……。
エアベースとかすっごく恥ずかしいんだぞ?
あのツインテールの子の前でも、どうにか弾けてた事は褒めてくれよ……。
勿論、学祭までにはもうちょっと緊張しないように頑張るけどさ」
「わーってるって。
おまえにしては頑張ったじゃん、澪。
知らない人の前でエアベースが弾けただけで十分な進歩だよ。
頑張ったじゃんかよ。
あのツインテールの子はいつの間にか居なくなっちゃってたみたいで残念だけどな。
澪の練習のためにももうちょっと見ててほしかったんだけどなー」
律さんが笑い、澪さんもそれに釣られて笑った。
二人きりだからこそ見せる信頼し合った笑顔……。
そんな風に見えた。
本当に羨ましく思える二人の関係だ。
でも、私の頭の中はそれどころじゃなかった。
『ツインテールの子がいつの間にか居なくなっちゃってた?』。
私はここに居るのに?
変わらず公園のベンチに座って、二人の姿を見つめているのに?
当然だけど、律さんと澪さんが私を見ない振りをしてるわけでもない。
こんな事有り得るはずない……。
有り得るはずないのに、私は何故こんな事になったのか心当たりがあった。
勿論、私のお願いのせいだ。
他にこうなる理由なんて存在するわけがない。
でも、どうしてこうなるの……?
私はこんな事をお願いしたりなんかしてないのに……。
自分の姿を『石ころ帽子』で消す事なんて願ってないのに……。
私がお願いしたのは……、そう……。
『平沢さんの事をもっとよく知りたい』ってお願いだったのに……。
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