過去ログ - 光成「・・・パラサイトじゃと?」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/07/14(土) 00:05:45.78 ID:oPI76kVIO
ざわつく都会の喧騒を、ししおどしが岩を打つ音がかき消してしまう程の、なんとも広大な庭園の中央の屋敷の中。

二人の男が向かい合い、座っている。

「ミンチ殺人、ニュースや新聞などで御覧になられたことがあると存じますが」

一人の男は、巨大な身体をダブルのスーツに詰め込み、座布団の上に丸太のような脚を小さく折り畳んでいた。
プロレス界で、いや、日本に住んでいるのであればこの男を知らぬ者はいないであろう、一流の格闘家であり、最高のエンターテイナー、アントニオ猪狩こと猪狩完至である。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 00:15:05.24 ID:oPI76kVIO
「『口だけ頭』じゃな、髪の毛を引っこ抜いて人間かどうか判別するんじゃ」

向かい合うもう一人の男は、つるりと見事に禿げ上がり、紋付き袴を身に纏っている。

この精力に満ちた老人こそ、屋敷の主であり、財界切っての実力者でもある、大富豪、徳川光成である。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 00:18:29.13 ID:oPI76kVIO
「あの頭じゃ判別できんなあ、と思ったじゃろ」

猪狩は、その通りですと言う言葉を喉の奥に押し込んだが、口角が意思と反して持ち上がってしまった。

「ほら、笑っとる、ほら」
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 00:49:15.29 ID:oPI76kVIO
「御老公・・・パラサイトの話を」

「・・・試合か」

指先を離すと同時に、光成は猪狩の言葉を食って言った。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 00:49:56.87 ID:oPI76kVIO
車一台程も包み込めそうな、巨大な布が天井から現れると、室内の明かりが落ちた。

間も無くして映し出されたのは、高速で左右に振られている風景。

「・・・酔ってしまいそうじゃ」
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/07/14(土) 02:11:30.31 ID:oPI76kVIO
服装や身体付きから察するに、映された人物は、男。

問題は首から上である。

血液が染み込んだ、ワイシャツの襟から伸びていたのは、この世の物とは思えぬ物体だった。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 02:12:04.30 ID:oPI76kVIO
特撮とは程遠いリアルを感じさせる、絶え間なく動き続けるそれ等、異形の物体。

「パラサイト・・・『口だけ頭』どころの騒ぎではないわ」

「御覧頂きたいのはこの後です」
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 02:14:05.97 ID:oPI76kVIO
「なんと!見えんかった」

「異常な程のスピードです」

「ん・・・足元、死体か」
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 02:18:42.12 ID:oPI76kVIO
やがて少年は、その生物の懐に飛び込み、何やら右手の武器らしき物で、人間の胴体から蛸の脚を切り離した。

「なんと!人間か」

「はい・・・いや、正確には半分人間です」
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 02:41:06.14 ID:oPI76kVIO
「あれは・・・右手だけ、パラサイトか」

「その様です・・・本来この生物は人間の頭部に寄生し、脳を支配して身体を乗っ取ると聞いています・・・しかしこの少年が寄生されたのは右手、人間の脳を残したまま共存しているようです」

「そして人間部分の身体能力も桁外れておる・・・右手の影響かの」
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 02:41:47.55 ID:oPI76kVIO
「泉新一、都内の高校に通う少年です」

『ミギー、早く行こう』

『待てシンイチ、まだ生きている』
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 02:49:01.54 ID:oPI76kVIO





以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 10:08:57.28 ID:aHhPZELjo
だが、それらの事柄は、私達一般人には縁の無い話であり、テレビ番組の『世界の奇術』のそれを視て鼻で笑いながら、憐れみの眼差しを送るのが常である。

しかし、お約束に縛られているのは私達も例外では無かった。

「身体の大きい男は強い」「反社会的な見なりの者は危険」
以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 10:09:55.13 ID:aHhPZELjo
合気道場の門下生が、見えない力で投げ飛ばされるのと同じように、我々は強面の男に道の端に追いやられているのである。



新宿歌舞伎町。
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 10:10:40.15 ID:aHhPZELjo
そしてその流動する人垣の中心には、何も、無い。

「どう言うことだ?こりゃあ・・・」

人々は無意識にこの路地裏を避けている。
以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 11:17:15.00 ID:oPI76kVIO
自分より少し背の高い後ろ姿に、待てと声を出そうと一歩踏み出すと、顔面が焼け焦げるかと思うような熱風に尻餅をついた。

「大丈夫かい?おっちゃん」

ティーシャツにジーンズの、あどけない表情の少年が、心配そうに手を差し伸べる。
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 11:18:20.17 ID:oPI76kVIO
「こりゃあ・・・どう言うことだ?」

眉間を通る油汗を拭うことすら許されぬ空気の中、川本が必死に絞り出したのは先ほどの自問だった。

少年は暫らく川本の瞳を見据え、やがてニコリと笑い話し始めた。
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 11:18:58.19 ID:oPI76kVIO
「教壇の上から怒鳴るんだよね、これやったの誰だって・・・生徒達は目を伏せ身をすくめ、圧倒的な恐怖の前に事が過ぎるのを祈るように待つ」

少年は路地の奥へ振り返り、背中を見せ、続けた。

「幾度もその試練を乗り越え、やがて大人になる・・・本能的に学んだんだよね、知恵を身につけ体力を養って、恐怖を遠ざけることを・・・でも、もし大人となった今、世間の荒波から身につけた、この知力と体力の鎧をいとも簡単に吹き飛ばす程の「熱」を感じてしまったらどうするかな?」
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/14(土) 11:19:56.15 ID:oPI76kVIO
通り過ぎる人々は変わらず、こちらを見向きもしない。

「意に介さない・・・いや、意に介せないと言ったほうが正確か、恐怖の度合いが強過ぎると、脳は現状を受け入れる機能をシャットダウンしてしまうんだ」

再度高まる鼓動は、川本の言葉を詰まらせる。
以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:49:34.75 ID:aHhPZELjo
この熱風を生み出しているのが、そこらをうろつく街のチンピラだと言うのか。

怪訝な目で少年を見るが、発言を撤回する様子は全く無い。

喧嘩などこの街では日常、アクビが出る程見て来た。
以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga]
2012/07/14(土) 12:50:11.30 ID:aHhPZELjo
少年はバッグでも小脇に抱えるように、川本の胴体に逞しい腕を巻き付けそのまま「熱」の中心、薄暗い路地裏へ突入した。

遠ざかって行くネオンに向かって「降ろせ」「離せ」と喚く川本の声は、少年の恐ろしく速く回転する両脚を止めることは出来なかった。

細長い道のポリバケツやビールケースが何度も頬をかすめる中、いい加減にしろ、となんとか手を伸ばし握りしめたシャツの背中を、渾身の力を込めて引くと、それはいとも簡単に裂かれた。
以下略



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