11: ◆0WipXNi8qk[saga]
2012/07/15(日) 20:51:46.45 ID:arZspdAto
***
食堂のテーブルの上には、刺し身や天ぷらなど豪華な食事が並んでいる。
停学中に理事長の家でこんなものを食べていいのか、などという罪悪感が出てきた。
「本当は君の妹くんも呼ぶべきなのだろうが、まぁ名目上は停学の件に関する話だからな。
今度、改めて兄妹揃って招待するので、そこは許してほしい」
「い、いえ、そんな!!」
俺は慌ててそう言う。
「ふん、そんなに緊張するな。では、いただくとしようか」
理事長はそう言うと、右手で十字を切って「いただきます」と呟いて箸を取る。
俺も同じように「いただきます」と言って食べ始める。
予想はしていたが、天ぷらも刺身もやはり高級品らしく、明らかに普段食べられないような美味しさだった。
「あ、あの!」
「……なんだね?」
俺は勇気を出して話を切り出す。
ここに来たのはこうしてもてなされるためじゃない。
「この度は、本当に申し訳ありませんでした……。編入の件などでお世話になったというのに、こんな恩を仇で返すような真似をして――」
「……確かに入学シーズンがやっと終わって一息ついた頃に、『うちの息子と娘をそっちの学校に編入させてくれ!』なんて隼人のバカが言ってきた時は頭にきたな。
まったく、716日間も連絡すら寄越さなかったくせに、いきなりこれだ」
「うっ……すみません…………」
「君が謝ることではない」
……これで終わり?
いやいやいや、そんなわけはない。
「あの、それに停学の件も……」
「なに、分かっているさ。アイツもよくバカやってたからな、君と同レベルかそれ以上の」
「え……?」
「何か、理由があるのだろう? アイツもいつもいつもそうだった」
そう言ってどこか懐かしそうに俺を見る理事長。
その目を見て。
俺は全てを話さなければいけない、そんな事を思った。
しかし、もし話したらどうなる?
今回の件には理科部、そして志熊理科が深く関わっている。
もしも正直に話せば、いくら理科でもその立場はそうとう危ういものになるのではないか。
どうする? >>12
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