10: ◆0WipXNi8qk[saga]
2012/07/15(日) 20:49:21.35 ID:arZspdAto
***
屋敷の中は大体イメージ通りだった。
玄関から入ってすぐ目に入るのは、ザ・豪邸といった感じの大きなホール。
正面には二階へ上がる幅の広い階段。壁面にはいくつものドアやら奥へと伸びる通路の入口がある。
そんな雰囲気に圧倒される俺だったが、ふとトントンという軽い足音が階段の上から聞こえてきた。
「――ふーん、あんたがウワサのヤンキーか」
そう言って階段の上の方からこちらを物珍しげに眺めるのは、金髪碧眼の少女だった。
服装は黒のスカートに白のキャミソール。
おそらくはここの一人娘か何かと思われるが、意外と普通の格好だ。
「え、えっと……初めまして……羽瀬川小鷹、です」
「へぇ、ヤンキーでも挨拶はできるんだ。お礼に踏んであげるわ感謝しなさい」
父親の前でなんて事言ってんだコイツ……と俺は唖然とする。
「星奈、小鷹君は私の客人だ。その態度はやめなさい」
「え、客人? あはは、冗談でしょパパ。
大人しい学校で悪ぶって暴れて停学くらう、時代遅れの絶滅危惧種ヤンキーが客人??」
酷い言われようだが、暴れて停学くらったのは紛れも無い事実なので何も言い返すことはできない。
もちろん、悪ぶっているつもりなどはないのだが、この髪や目付きから誤解されるのも無理はない。
金髪の少女は、俺が何も言い返さないのをいい事に、さらに口を開く。
「ていうか、一人で勝手に痛い事やってるのは自由だけど、それで他人に迷惑かけるってのはどうなの?
なんでパパもこんなの退学にしないのかしらね。あとそのプリン頭もマジウケるんですけど。どう見ても染めようとして失敗した醜い――――」
「 星 奈 ! ! ! ! ! 」
理事長の怒号が飛んだ。
あまりの大声に、金髪の少女(星奈というらしい)だけでなく、俺までビクッ!! と全身を震わせる。
そして、そんな中微動だにしないステラさんはやはりプロの執事だという感じがする。
星奈はちょっと涙目になっている。
ああ見えて案外打たれ弱いのかもしれない。
「な、なによ……! だって、そいつは…………!!」
「星奈、後で私の部屋に来なさい」
「うぅ……」
「返事は!!!」
「わ、分かったわよぉ…………」
そんな事を言って、星奈は階段を登って行ってしまった。
理事長は俺に申し訳なさそうな目を向ける。
「すまない、小鷹君。娘には後でキツくいっておく」
「あ、いえ……俺も悪いですし…………というより俺が悪いですし」
この様子から、おそらく俺のこの髪の事情も分かっているのだろう。
だから、娘のあの言葉に本気で怒っていたのだ。
まぁ、それでもあの子は少し気の毒な気がする。
この髪を見て、染めるのに失敗したプリン頭という印象を持つのは不思議ではない。
それに、学校での俺の評判を考えれば、あのような言葉をぶつけられるのも仕方ない。
そして今回の停学騒ぎは誤解でも何でもなく俺のせいだ。
そんな感じに気まずくなりながら、俺は案内されるがままに夕食の準備がされているという食堂へとついていった。
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