過去ログ - 和「あんたのなつやすみ」
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174:μ[saga]
2012/09/20(木) 18:27:52.80 ID:xX5qScGu0
それにしても、危なかったわ。
久し振りに律の姿を見たけれど、予想以上に日焼けをしているわね。
日本の海で四日泳いだだけの律でさえ、あの日焼け具合なのだ。
ハワイに二週間行っていたはずの私達がこの肌の白さだと異常でしかないわ。
日焼けサロンでは念入りに焼いてもらう事にしなきゃね……。

そう思った瞬間、私達は気付いてしまった。
律が駆けて行った先に、ツインテールの子が立っていた事に。
普段と全く異なっているから、見落としてしまっていた。
肌の色が全然違っていたから気付けなかったのだ。
特徴的なツインテールにあの背丈……、間違いない、梓ちゃんだ。
これは予想外だった。
律は驚きの黒さと言っていたけれど、
まさか本当に梓ちゃんがこんなに日焼けしていたなんて……!

だけど、それだけなら問題無い。
これは単に律と梓ちゃんが待ち合わせをしていた、
ってだけの話であって、私達のこれからの行動には何の問題も無いわ。
むしろ梓ちゃんに気付かれる前に、
日焼けした梓ちゃんの姿を見ておけて幸運だったとも言えるわね。
こんなに日焼けしてるなんて、話には聞いていても想像も出来ない。
それこそ律が駆け寄って行かなければ、梓ちゃんの存在にも気付けなかっただろう。
大丈夫、私はまだついているわ……!

でも、私は不覚にも思いも寄っていなかったのだ。
澪の律に対する想いの強さに。
二週間律に会えなかった澪の寂しさに。

きっかけは合流した律が梓ちゃんの手を握った事だった。
これから二人で何処かに遊びに行くのだろう。
私はそれくらいに軽く考えていたのだけれど、
澪にとってはそれこそがいたく衝撃的な事だったのだ。


「ああああああああああああああああああっ!」


街中に響くのではないかと思えるほどの絶叫。
絶叫したのは、勿論澪だった。
半泣きで、絶望し切った表情で、喉の奥から叫んでいた。
周囲で歩いていた人達が足を止めて一斉に私達の方に視線を向ける。
勿論、それは道路の先に居た律達も例外ではなかった。


「あっれー、澪に唯に和じゃん?
どうしたんだよー、こんな所で?
もうハワイから戻って来たのかー?」


梓ちゃんの手を握ったまま、律が道路の先から駆け寄って来る。
ひきこもり生活の事なんか完全に忘れ去っている様子で、
澪が律達の繋がれた手を指し示しながら、呻く様な言葉を絞り出した。


「なななななな、何で二人とも手を繋いでででででで……!」


「何でって訊きたいのは私達の方なんだが……。
手……ってこれか?
いや、これから憂ちゃんと会う約束しててさ、
遅れちゃって悪いから二人で急ごうぜ、って意味で手を握っただけなんだが……」


「そ、そうなんだ、よかったー……」


「よかったって何だよ……。
いやいや、それより、おまえ達どうしてこんな所に居るんだよ?
何かやけに日焼けしてない気がするけど、実はハワイに行ってないんじゃないか?
なんてなー」


そう言ってから律が笑ったけれど、梓ちゃんも含めて誰も続いて笑わなかった。
そうしている間にも、私の頭は混乱の極致を極めていた。
まだ……、まだよ、和……。
まだ誤魔化せる、誤魔化せるはずよ……。
そうね……、この全然日焼けしてない肌は、
ハワイで凄く焼けて恥ずかしいから、化粧で白くしてるって事にすれば……。
誤魔化せる……、これならまだ誤魔化せるわ……!


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