2:μ[saga]
2012/07/19(木) 19:32:02.57 ID:Jwj4hYrL0
「どうしたの?
和……ちゃん……?」
唯が焦点の合わない視線を私に向ける。
若干震えている声色から察するに、
発声にすらかなりの体力を使ってしまっているみたいだ。
また、汗が流れる。
私から、そして、唯の肌から。
唯とこんな同棲みたいな状況に追い込まれてから二日目。
私と唯はただただ夏の熱気に汗を流してばかりだ。
その原因の一端が私にあるとはいえ、少しだけ唯に申し訳ない気がしないでもない。
だけど、こればかりは私の未来のためにも譲るわけにはいかなかった。
この唯との奇妙な同棲生活には、私の未来が懸かっているのだ。
部屋にこもる気鬱の熱気には、私と同じく唯にも耐えてもらうしかない。
「唯、あんた……」
私は寝転がる唯に出来る限り優しい声を掛ける。
昨日から考えていた事を今こそ実行するべきだと思ったからだ。
正直、唯が居なければ、昨日の内に実行してしまうつもりだった。
背に腹は代えられないし、実を言うと普段から家族でそういう生活をしている事だしね。
だからこそ、これから私はそれを実行するべきなのだ。
それが私のためになり、結果的には唯のためにもなる。
「そんなに汗まみれになって……、凄く暑いわよね?
まあ、それはそうよね……。
こんな炎天下の日にカーテンまで閉め切ったりして、暑いに決まってるわ。
暑くない方がおかしいわよ、こんなの」
「じゃあ、和ちゃん……。
お願いだからクーラーを……」
「申し訳ないけど却下よ、唯。
長い付き合いだから知ってると思うけど、
真鍋家は摂氏四十℃を超えない限り冷房機器は使わないのよ。
それにクーラーを使うなんて、そんな危険な橋は渡れないのは分かっているでしょう?
扇風機なら回ってるいるんだから、どうかそれで我慢してちょうだい」
「扇風機でどうにかなる暑さじゃないんだよう……」
「それもそうでしょうね……、私だって暑いわよ、こんなの。
だから……」
言い様、私は肌に張り付く唯のシャツの裾を握る。
突然の急展開に唯が驚いた表情を見せたけれど、
私は唯のその表情を無視して、冷たく静かに言い放ってみせた。
「服を脱ぎなさい、唯。
この熱気に対抗する唯一の手段……、それは全裸になる事よ」
「ええ……ふぐっ!」
驚いたのか唯が大声で叫び出しそうになったから、
咄嗟に口の中に右手の指を四本突っ込んで食い止める。
もう……、全裸くらいで大袈裟な子なんだから……。
全裸なんて夏の暑い日には常識じゃないの……。
普段羞恥心が無いように見えるけれど、意外とこの子もそういう感情を持ってるのねえ……。
でも、唯には少し悪いと思うけれど、
これには何としても最後まで付き合ってもらうしかない。
そう、これは私の未来の懸かった唯との同棲生活。
自分の将来のため、高校二年生のこの夏、
私は唯を巻き込んででも、自宅に引きこもらなければいけないのよ……!
186Res/253.45 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。