1:μ[saga]
2012/07/19(木) 19:31:17.97 ID:Jwj4hYrL0
……暑い。
非常に暑い。
尋常でないくらい暑い。
微動しただけで汗が吹き出し、瞬く間に全身を濡らす。
口を開いただけで喉の奥が灼け付く熱気。
夏の熱気は人間から思考力をいとも簡単に奪い去る。
私からも、あの子からも、判断力や気力を削ぎ落としていく。
気鬱。
後悔。
虚脱。
様々な感情、様々な感覚が私の全身を駆け巡る。
どうして……、
一体全体、どうしてこんな事になってしまったのかしら……?
自分でも分かるほどに大きく嘆息しつつ、
真昼だと言うのに薄暗い自室を軽く見回してみる。
「あぢゅいー……」
私の幼馴染みが全身を汗まみれにして、畳の上で寝転がっていた。
汗に濡れて、全身にシャツとホットパンツを貼り付けて、
ただこの夏の日が暮れる事だけを切実に願う表情を浮かべて、ただ寝転がる。
昨日から何一つ変わっていない光景。
つい私はまた嘆息してしまうのを禁じ得ない。
夏の日の唯は幼稚園の頃からいつもこんな様子だった。
暑さが苦手で、炎天下ではすぐに体調を崩して、
だからと言ってクーラーを使っても身体を壊す面倒な体質の幼馴染み。
本当に面倒臭い子だなあ、といつも思う。
この子にはいつも面倒を掛けられてばかりで、
一緒に居ながら気を抜けた事なんてほとんど無い。
でも、私は不思議とそれが嫌じゃなかった。
上手くは言えないけれど、それが私と唯の幼馴染み関係と言う物なのだろう。
「ねえ、唯……」
自分の汗が更に吹き出すのを感じながら、私は寝転がる唯の傍まで歩み寄る。
顔の前にしゃがみ込んで、止まらない汗に濡れる唯の頬に手を伸ばした。
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