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2012/07/24(火) 11:49:09.39 ID:d42ujU9K0
年相応に涙ながらに父を嘘つきと罵倒できれば、とも思う。
内在する悪態がきれいさっぱり掃除できる事くらい本能的に感じ取っていたが出来たら苦労はしない。
美琴がイヤイヤと泣くだけで、一人娘に甚大な愛を降り注ぐ両親は悲しそうに目尻を下げるのだ。そんなの簡単に予想がつく。
美琴は隣に居る母にも、何処にいるかわからない遠い地にいる父にも、特に文句を言う気は無かった。
だって、大好きな人達の涙は見たくない。
しかし。
娘の些細な変化に気付かないほど母も鈍感な人ではなく。
今にして思えば、ぷくっと頬を膨らませてぶーたれている美琴の横顔を彼女が見逃すはずもなかった。
気がついたからこそ、彼女は娘に語りかけるように歌を歌いだしたのだろう。
「きらきらひかる、おそらのほしよ」
静寂の夜に浮かびあがる歌声に、少女の耳はピクリと動く。
美琴は耳慣れしたこの曲の正体を知っていた。
季節が穏やかな春から太陽きらめく夏へと移り変わろうとしはじめた時期から、
幼稚園の先生がオルガンを弾きながら皆に歌い聞かせるようになったお歌。
すぐに曲名を思いだす。
「きらきらぼしっ!」
それ、私、知ってるよ。キラキラと目を輝かせて、美琴は音を奏でる母親につげた。
「すごいね。美琴ちゃん。物知りだぁっ!」
「あのね。あのね。おほしさまのおうた、だよね!」
褒められた事に上機嫌になった少女は知る限りの知識を母親に提示する事に躍起になる。
あのね、あのね、と。
つたない舌使いで大げさな身ぶり手ぶりを添えて、
自分よりもずっとずっと背 の高い母親の顔を見上げて美琴は話し続ける。
美琴の腹の中の虫は、何処かへ飛んで行ったらしい。
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