過去ログ - 禁書目録「それはきっと、幸せだった頃の夢」
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[saga]
2012/08/07(火) 22:58:09.64 ID:Wiz6b3VDo
この部屋にいたのはきっと塔の上で歌っている何者かだ。
妖精にでも隠されていない限りは。
「えええ――」
背後で弟子が泣きそうな顔をするが黙殺する。
ついてくると言ったのは彼だ。
「嫌なら結局、帰ってもいいのよ――ステイル」
名を呼ばれ、はっとしたのか、彼の表情はすぐさま真剣なものに変わる。
その端にはまだ怯えが残るけれど、今さら退くつもりはないようだ。
私達は階段を更に上り、塔の頂上へと出る扉を開ける。
瞬間、いつの間にか降り始めていた雪を纏った風が吹き付け目を瞑ってしまっ……、
今、一瞬、視界の端に見えた白い影は――。
その先を考えるよりも早く私の両目は開き、そしてやはり、白い人影を目撃する。
ひっ、と後ろで息を呑む音が聞こえてくるが構わず私は外へと出た。
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