過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
↓ 1- 覧 板 20
108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:30:17.88 ID:4DOG5YTr0
それから間もなく、玄関からまたしても三人の影が見える。
両脇にいるのは小百合ちゃんと、眼鏡が無いので一瞬分からなかったが辻井くん、
そして二人が抱えているのは・・・
「珊ちゃん、しっかり!」
ずるりと崩れ落ちそうになる珊ちゃんを、私と望月くんが何とか受け止めた。
珊ちゃんの傷は、勅使河原くんよりはるかにひどい。
急いで車の中に寝かせると、中にある救急箱から包帯で取り出し、
珊ちゃんの制服を少しだけはだけると、包帯を巻いて血止めした。
車から出る。小百合ちゃんたちも、疲労困憊だった。
「よかった・・・、小百合ちゃんとせっかく友達になれたのに、
もし何かあったら・・・」
と、やっぱり何か足りないことに気づいた。
「ねぇ・・・他のみんなは・・・」
恐る恐る尋ねると、小百合ちゃんは
「松井さんと金木さんはわからない・・・川堀君は柱に潰されて・・・」
言葉を詰まらせる小百合ちゃんに、私は悟った。
川堀くんも災厄の犠牲に・・・
でも、どうしても実感が湧かない。
死んだといってもこの場にいないし、もしかしたら、王子くんも川堀くんも
ひょっこり元気な姿で戻ってくるのではないか?
まだそんな希望を捨てきれずにいた。
が、その次に起きた悲劇が、
いやでも災厄によってクラスの仲間の命が奪われたことを、痛感させた。
千曳先生が抱えているのは、眼鏡の男子生徒。
辻井くんはここにいるので、風見くんに間違いない。
榊原くんも一緒にやって来た。
けど、二人の表情が曇っている。まさか・・・
千曳先生が風見くんを横たえた。
頭から血を流したままぐったりしている風見くんを見て、
勅使河原くんが足を引き摺りながら駆け寄る。
が、いくら揺すっても、風見くんは動かなかった。
「風見!おい・・・ちくしょう!ちくしょう!!」
勅使河原くんは地面に拳を叩きつけると、雨空に向かって咆哮を上げた。
あまりの激しさに、拳から血が流れ始める。
望月くんが止めようとしても、それを振り払い、勅使河原くんはなおも叫び続ける。
その間に榊原くんは、
杉浦さん、金木さん、そして松井さんが亡くなったことを皆に伝えた。
私たちが愕然とする間に、榊原くんはいきなり携帯電話を掛けると、
再び炎に包まれた合宿所へ入っていった。
そして、千曳先生は猿田くんとなにやら話をすると、
榊原くんとは別の方向へ向かっていく。
それからしばらく後、千曳先生と猿田くんが何かを抱えながら戻ってきた。
風見くんの時と同じように、そっと地面に寝かせる。
154Res/348.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。