過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:05:37.07 ID:4DOG5YTr0
◆No.14 Takako Sugiura
対策係として、毎日災厄の恐怖と戦い続ける中、
せめて一日だけでも日頃の辛さを忘れ、遊びに行った海水浴。
しかし、あの日起こった悲劇によって、
私の目に映る世界から、あらゆる色彩が失われた。
中尾が死んだ。
その最期はフェリーに轢かれて、腕を切り刻まれるという無惨なものだった。
あいつがビーチボールを取りに行くのを止めていれば・・・
今でも、後悔の念に苛まれる。
中尾とは中1の冬からの付き合いである。
最初は、泉美に媚びる小太りな変な男子というイメージが強く、
お世辞にも第一印象は最悪だったが、年が明けた頃から
中尾はまるで別人のように精悍な姿になった。
一度試しにどうして痩せたのかを聞くと、答えはこうだった。
「赤沢さんに相応しい男になるため、体を鍛えた。それだけだぜ」
その言葉と意気込みが、中尾に対する私の考えを一変させた。
私が中尾に対して抱いた感情が、好意程度のものか、それとも片想いだったのか、
どのくらいのものだったかは、自分でもよく分からない。
ただ一つ言えることは、共に泉美を守ろうという同志であり、
良き相棒だったことは間違いない。
だからこそ、私は中尾を失ったことによる喪失感が、
心にぽっかりと大きな穴を開けて、
心の均衡をも揺るがせていることは、自分でもよくわかっている。
でも、どうすることもできずにいた。
そして中尾の死に直面したことで、私は死の恐怖に怯え続けるようになった。
自分が死ぬ危険に晒されるのを実感したのが、恐ろしいわけではない。
これ以上、私の大切な人を喪うのが、何よりも怖かった。
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