過去ログ - 燈馬「おはようございます」可奈「はい、お弁当」
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12:燈可奈弁X ◆WxhrC2Qhtw[saga]
2012/08/11(土) 02:10:34.82 ID:9RA2XFou0
>>11
>>3

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その日の朝、目覚めて身支度をした想は、トーストベーコン卵とそこそこ手際よく焼き上げる。
冷蔵庫のジュースと一緒に朝食を済ませる。
後片付けと用意を済ませ、表に出る。普通に施錠をして普通に出発する。

さすがに師走となると冷え込む。
思えば、本当に日本人の師走らしい師走だった、そう思い返される。
そろそろ大掃除の支度でもしようか、その前に少しは楽しい事でもしようか。

いつしか、想は隅田川の川沿いに歩みを進めていた。
想にとって青春の感慨とも無縁ではない隅田川だったが、
高速道路がいい風よけになるこの川沿いの一帯には、
青いビニールシートで作られた小さな住まいが寄り集まっている。

貧困問題への関心はゼロではないが、今の所はいつもの通勤風景そのもの。
むしろ、こうして日々往復する内に気が付いた、
それぞれに個性的で、それでいて日々規則正しい。それが風景になる程、時計の様に。
数式を作れそうな法則性が探求心を揺るがすぐらいだ。
それでもなんでも今の所は身近な世界と言う訳ではない。
犬を散歩させている老婦人と挨拶を交わし、階段を上って河川敷から道路に戻る。

いつも通り、「みさと」でお任せ弁当を一つ。
ちょっと変わった事と言えば、店を出た所で男にぶつかった。

想は謝ろうとしたが、男はそれを無視してずいっと先に進む。
だが、店には入らなかった。店を伺っている様だ。
想は嫌な感じを覚える。単に初めての店を躊躇しているのかも知れないが、雰囲気が何か剣呑だ。

声を掛けようか、そう思った辺りで男は踵を返し、
背中を丸めて想にぶつかりそうになりながらずいっとその場を後にする。
元々、この店に寄る事自体が想にとって遠回りだ。
少しだけ視線で見送り、想は至って律儀な勤め人の自分を取り戻す。


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