過去ログ - 燈馬「おはようございます」可奈「はい、お弁当」
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39:燈可奈弁X ◆WxhrC2Qhtw[saga]
2012/08/13(月) 00:31:19.33 ID:epxDVnkP0
>>38

「飛び級でしたから。学問は楽しかったですけど、
率直に言って、同級生からの視線はむしろ悪意の方が多かった」
「それで、年齢通りの高校生活を?」
「その解釈は正確さを欠く、と言っておきます。
確かに、高校に入った当時は悪意と言う以前でした」

「悪意を持つ程の関心にすら至らずか」
「その中で高校生の高校生活。それを教えてくれたのが水原さん。ええ、そうです」
「なるほど。
学問の楽しさ、それだけは微塵も失われていない、そうらしいな」

少々危うい足取りで想の机に近づいた湯川が言う。

「見事なものだ。うちに大学の教授でもこれだけの資料は揃えていない」

想の机、本棚、そこに詰め込まれた資料の一つに手に取って湯川が言った。
想の所蔵資料の大半は貸倉庫に収納されているのだが、
今ここにあるかなりの部分は、想がインターネットから収集した最新にして良質の資料だった。

「そうですね。コンピューターの助けも借りますが、
数学は紙と鉛筆があれば研究出来ますから」

笑顔を見せる想の前で、湯川が書類封筒を開く。

「数学科の教授から借りて来たんだが」
「…リーマン予想を否定しているんですか?…」

湯川が差し出した文書を斜め読みして、想が言った。
その眉が僅かに陰って見える。

無理も無い、湯川はそう思う。湯川が後から知っただけでも、
想にとっては言わば青春の墓標にも等しい領域。その痛みは研究者として決して他人事ではない。
だが、それでも湯川は、想の魂が決して土深く眠ってはいない事を知っていた。

「この証明が正しいか、君に判定してもらいたい」
「時間が掛かりますよ」
「ゆっくり待つさ」

想が、机に向かって受け取った論文を熟読し、鉛筆や付箋を忙しく動かし始める。
その内、一人沈没した湯川に気付き、押し入れを開く。
そこで、ふと顔を見せた袋打ちコードを奥に押し込み壁にもたれる湯川に夜具をかける。


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