569: ◆WNrWKtkPz.[saga]
2012/08/23(木) 20:45:30.02 ID:hdiF6eWI0
「姉ちゃん、ただいま!」
「おかえり、受験どうだった?」
「うーん、まあまあ、かな……」
「もう、どっちなのよ」
「わ、分からないよ……」
「ま、受験ってそんなものよね。さて、これから晩御飯作るから、今日は早めにお風呂入っちゃいなさいよ」
「はーい」
こんな風に、私たちは幸せな生活を送っている。
これからもずっと……続くのだろう。
〜♪
「……はーい」
チャイムが鳴ったため、扉を開ける。
「宅急便です」
「はい、ちょっと判子取ってきますね」
「いえ、この商品は受け取ってもらった後、すぐに回収させてもらいますから」
「……ん?」
どういうことだ、と不審に思いながら彼の持つICレコーダーを再生する――
『奈央、久し振りね。
あなたがこれを見ているという事は、私はこの世にはもういないということになるわね。
ごめんなさい、私は奈央との約束を破ってしまったわ……。でも、私にはこのゲームでやるべきことがあったの。
だから、これだけはいくら奈央との約束があっても譲ることが出来なかったの。
勝手な人でごめんなさいね。でも、ショッピングには本当に一緒に行きたかったな……。
さあ、時間ももう無いしこれでお別れになるわね。』
それじゃ、また会えることを信じて――
「文香、さん……! あ、ちょっと!」
余韻に浸る事もなく、謎の配達員はICレコーダーをを回収して走ってどこかへ行ってしまった。
そうか――文香さんは決して無駄死にしたわけではなかったのだ。
何か使命を持ってあのゲームに参加して、そして自分の命を以てして、やり遂げたのだ……
「ねーちゃーん、石鹸とってー!」
「……っ、はーい、ちょっとまってねー!」
私は涙を拭って、亮に石鹸を私に行くために風呂の扉を開けた。
「ちょ、そこに置いておくだけでいいから!」
「なによーいいじゃない姉弟なんだからー」
「い、いいから!」
「はいはい、ここに置いておくわね」
全く可愛がりのある弟だ、とニヤニヤしながら晩御飯を作る――
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