942: ◆WNrWKtkPz.[saga]
2012/08/28(火) 22:29:40.97 ID:vJ1/8zcw0
「……まだ、俺にはやるべきことがあるんだわ」
そう、自然に口が開いていた。
「色条のこと、だろう?」
高山は知っていたというような表情をしてこちらを見ていた。
「……どうして、お前が?」
「かなり前にだが一時的に色条と行動していたんだ。……ずっとお前のことを探しているみたいだったが、いまは“向こう”に居るみたいだ」
「優希……」
そうか、優希も俺の事を探してくれていたのか。
それが分かっただけでも、俺の心は満たされそうだった。
「だが、色条の首輪を外すのはまず不可能だ。それを知った上で何をするというんだ?」
「……分からねぇよ。でも、俺は最期まで優希の傍に居てやらねぇと駄目なんだわ」
「ふっ……そうか。だったら、そうすれば良い――」
そう言って、高山は俺から奪っていたPDAを床に置いて、拳銃をしまった。
「高山、お前…………」
「俺に構う暇があったら治療をしておくんだな。それ以上出血すると、死ぬ可能性が高くなるぞ――」
高山はこっちを見る事もなく部屋から出てしまった。
「くっ……!」
俺はすぐさま治療をしようとするが、痛みでなかなか立ち上がることができなかった。
「お、おい……大丈夫か?」
すると、物陰からひっそりと漆山が出てきて救急セットをこちらへ滑らせてきた。
「……悪いな、漆山」
「い、いや、目の前で怪我をしてる人間を放っておくわけにもいかんだろう……!」
漆山は恐らく俺が彼を殺しに来たのを知っているのだろう、目を合わせようともせずに部屋の隅に立っていた。
「……どうした、さっさと行けよ? 首輪を外したくねぇのか?」
漆山なら御剣たちに会っても特に何も問題が無いし、郷田とは既に接触済みなので簡単に首輪を外す事ができる。
こんなみすぼらしい俺なんて放って置いて、すぐさま彼らに会いに行けばいいのに……。
「ど、どうせお前も優希ちゃんに会いに行くのだろう? だったら一緒に行こうじゃないか」
「……お前、PDAに探知ソフトが入ってないな?」
「なっ……そ、そんなわけあるわけが無かろう! ひ、人の優しさを踏みにじる気か!?」
どうやら高山に頼りっきりだったようで、いきなり捨てられたものだから困っているようだった。
「ハァ……分かったわ。漆山は優しいのな……」
「それでいいんだ! 分かったならさっさと傷を治せ!」
「だったら手伝ってくれよ。1人だとやりにくいったらねぇんだわ」
よく分からないが、漆山が同行者となった。
早く傷を治して優希に会いに行こう……。
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