過去ログ - 春香「ねぇプロデューサーさん?」
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37:2/4[saga]
2012/08/24(金) 00:48:31.21 ID:+gymnPO2o
「小鳥さん、今日は律子と一緒じゃ?」
「えぇ、ついさっき外出しました」
「そうですか」
「何か買うものでもあったんでしょうね」
小鳥さんはその律子のように、人差し指を頬に当てて考え込むようなそぶりを見せた。
まるで律子の外出の理由が買い物以外に何かあるのではないかと、そう考えているような表情だった。
しかしこれは俺にとってかなりの好都合だ。
どんな理由があるにせよ、今事務所には俺と小鳥さんしか存在していない。
まるで今日夕食に誘うことが予め決まっていたかのようなベストなタイミングである。
俺はついに、自分の持つちっぽけな勇気を必死にかき集めて、食事のアポを取ることにした。
気が付いてみると、決心の表れか緊張の仕業か、自然と拳を握り締めていた。
「あ、あのっ!」
小鳥さんに向かって声をかけたとき、一瞬俺は一体どこで
ヘリウムを吸ったのだろうかと、オカシナ疑問が頭をよぎった。
しかし、自分の声に交わるようにして聞こえた高い声がヘリウムの作用によるものではなく、
小鳥さんの声だったということに気が付くまで、そう長い時間は掛からなかった。
「こ、小鳥さんからどうぞ」
「いえ……プ、プロデューサーさんからどうぞ」
「そうですか……あ、あのですね! 今晩飲みにでも行かないかなぁ〜なんて」
「へ?」
間の抜けた返事をする小鳥さんは、
まさに“ポカーン”といった顔をして、震える手で俺を指差した。
パチクリと瞬きを繰り返し、力なくアングリと開いたその口元も、
手に合わせて震えているように見える。
「ってえぇー!?」
「そ、そんなに驚くようなこと言いました?」
「実は……私も今日晩御飯に誘おうと思ってまして………」
なるほど、小鳥さんが驚くのも良くわかる。
まさか同じタイミングで、同じ内容のことを相手に伝えようとしていたとは………。
学がないため、どのくらいの確立なのかは計り知れないところではあるが、
そうそうあるようなことではないはずだ。
「でも、それなら話は早いですね」
「そ、そうね……お互い誘うつもりだったんですし」
「そうと決まれば、お仕事頑張りましょう! 僕も手伝いますよ」
「い、いえ……悪いですよそんな」
小鳥さんは申し訳なさそうな顔をして、フルフルと首を振った。
そんな小鳥さんの机の上には、大きなパイプ式ファイルが真ん中に鎮座し、
さらには領収書や、何かの書類の束が乱雑に積み重なっていた。
これではもはや事務員などではなく、しがない作家の机である。
「でも、かなり苦戦してるみたいですし」
「確かにメモリ不足ではありますけど……」
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