過去ログ - 春香「ねぇプロデューサーさん?」
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43:1/2[saga]
2012/08/24(金) 01:00:02.65 ID:+gymnPO2o
【酒は飲んでも……】
たった今プロデューサーさんとグラスを鳴らしあったというのに、
そんなことも忘れて、独りで飲む時のようにゴクリゴクリと
少し大げさに喉を動かしてビールを飲んでしまった。
これじゃネクタイを頭に巻いた、ただの飲んだくれのオヤジと何ら変わりはない。
とっさに口元に付いた泡をおしぼりで拭き取り、女の子を気取ってみたけど、
半分にまで減ってしまったジョッキが、無駄な抵抗だと教えてくれた。
「居酒屋でよかったんですか?」
不意にプロデューサーさんにそんなことを聞かれた。
見るとすこしバツの悪そうな、申し訳なさそうな顔をしている。
「本当はお洒落な店がいいかと思ってたんですけどね………」
後頭部に手をやりながら苦笑いを浮かべるプロデューサーさんは、
『生憎そういうところは心当たりがなくて……すみません』と節目がちに言った。
そんなプロデューサーさんの姿に、何というか……少し安心する自分が居た。
「い、いえ! 私居酒屋好きですから!」
残念なことに、私は居酒屋に何の抵抗もないような、乙女心の欠落した女。
「お洒落なところだと逆に飲み辛いというか、こう……肩に力が入っちゃうっていうか」
「あぁなるほど」
むしろそうしたお店のほうが、私にはハードルが高いような気がする。
でも、プロデューサーさんが『居酒屋でよかったんですか?』と私に尋ねたということは、
こんな私でも、ちゃんと普通の女性だと認識してくれたってこと。
私に気を遣ってくれたことより、その事実の方が嬉しかった。
でも裏を返せば、私がプロデューサーさんの期待に応えることができないということになる。
私はプロデューサーさんが思うような、居酒屋に抵抗がある女の子女の子した人じゃない。
親父成分がかなりの割合で混ざっていることを知られたら、幻滅されちゃうのかな……。
「あ、あの………」
穴を掘って埋まろうとしていた私をプロデューサーさんの声が引き止める。
その顔は少しだけ赤くなっているように見えた。
よくよく考えてみたら、私とプロデューサーさんの距離は今かなり近い。
ちょっと手を伸ばせばその赤い顔に触れることが出来るし、
そのことに気付いてしまった私の、速くなった心臓の鼓動も聞かれてしまいそう。
『いつになったらプロデューサーに告白するんですか?』
律子さんの声が頭の中でフラッシュバックする。
私がプロデューサーさんを意識するようになった一番の原因は、この律子さんの言葉。
傷つかないで済むようにと、胸の内に閉まっておいた心を引き出された。
自分でも気付かなかった、プロデューサーさんに対する心。
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