過去ログ - 春香「ねぇプロデューサーさん?」
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5:1/2[saga]
2012/08/22(水) 22:54:08.86 ID:zi9nDhH8o
【フツリアイ】

「はい小鳥さん、言われてた資料できましたよ」
「あっ、ありがとう律子さん」

超売れっ子アイドルグループ『竜宮小町』と、それを率いる売れっ子プロデューサー秋月律子さん。
テレビにラジオに雑誌のインタビュー、各地営業周りに握手会、ダンスレッスンにボーカルレッスン……。
多忙極まる彼女達にも休息は必要で、今日と明日、珍しく竜宮小町はオフになったみたい。
いえ……どうにかこうにかスケジュールを調整して、無理やりオフにしたと言った方が適切かしら?
だからいつもはテレビ局やスタジオを忙しく飛び回る律子さんも、
お家でゆっくり……となるはずが、こうして事務所で私の仕事を手伝ってくれている。

「手伝ってもらってる身だけど……律子さんもお休み取ればよかったのに」
「いえいえ、それなら平気ですよ」

メガネをクイッと片手であげて、律子さんは自信ありげに腰に手を当てた。
さしずめ『えっへん!』といったところかしら?

「メガネでスーツ、性別以外じゃ被ってる節のあるプロデューサーには負けてられませんから」
「あら勇ましい。 で、そのプロデューサーさんは……?」

遠めに見れば黒の割合が多くなってきたホワイトボードに視線を移し、
たった今話題に上ったプロデューサーさんのスケジュールを確認してみる。
今日は春香ちゃんのラジオの収録現場に同行してるみたいね。
もう収録は終わってるだろうから、今頃は車の中かしら?

  信号待ちで停車して、シフトノブに置かれたプロデューサーさんのほっそりとした、
  それでいて血管の浮き出た男らしく逞しい手にそっと自分の手を重ねる春香ちゃん。

  『春香、どうした?』
  『プ、プロデューサーさん……私………』

  震える口元から漏れた愛の言葉は、発進を催促する後続車のクラクションに掻き消され、
  身体を貫くような鋭く尖った音に驚いた春香ちゃんは咄嗟に手を離す。
  沈黙と沈黙の間に投げかけられた、闇夜に淡い光を放つ月のような仄かな恋心は、
  それを相手に意識させることなく、蕭然とした闇の中へ……………

「…………はっ!?」

なんとなく視線を感じた。
涎を拭きつつ律子さんを見てみると、何も言わずにただ私の顔を見つめていた。
その目を見つめ返していると、妄想明けの私にまた別の妄想が舞い降りてきてしまった。
な、なになに? コレなに? も、もももしかして律子さんってば私のこと……。
最近は百合だとかBLだとか、そういうものに大らかになりつつある世の中だけど、
きゅ、急にそんなこと言われたら……流石の小鳥だって、その……こ……こ…………

「困っちゃうなぁー!」
「何をニヘラニヘラ笑ってるんですか?」
「…………おっと」

私を見る律子さんの細い目は、いつのまにかジットリと湿度の高いものに変わっていた。
最近よくこうやって、律子さんに妄想を阻止されているような気がする。

「わ、私の顔に何か付いてるかしら?」
「いえ……ちょっと気になることがありまして」

バツの悪そうな顔をして、人差し指で頬を掻く律子さんは、
普段歯に着せぬ物言いをする彼女に、雪歩ちゃんの臆病さを少しだけ足したようだった。

「な、なにかしら?」
「一体いつになったら、プロデューサーに告白するんですか?」
「…………ピヨ?」

私の頭は、昔使っていたWindowsMEのようにフリーズし、ブルースクリーンが浮かび上がった。


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