過去ログ - 春香「ねぇプロデューサーさん?」
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6:2/2[saga]
2012/08/22(水) 22:55:41.74 ID:zi9nDhH8o
  システムがビジー状態です

  [プログラムの強制終了]
  ダイアログの表示待ちでシステムがビジー状態になっています。
  ダイアログが表示されるまで待つか………


「コンピュータを再起動………ってえぇー!?」
「私そんなに驚くようなこと言いました?」
「だ、だって私がそんな……告白なんて………」
「嫌いなんですか? プロデューサーのこと」
「えっ」

…………ドキリとした。
電話で打ち合わせをするプロデューサーさんの姿が頭に浮かぶ。
私の真正面にプロデューサーさんのデスクがあるからか、
どうしてもその顔に目が行ってしまう機会が多くあるわけで、
私の脳内HDDにはプロデューサーさんの表情がzip形式で沢山保存されてある。
コーヒーカップを倒してしまって、書類やパソコンは大丈夫かと心配する焦った表情だとか、
アイドル達にちょっかいを出されて、タジタジしている照れた表情だとか、
大きな仕事を獲得して、電話越しのディレクターさんにお辞儀をしてる嬉しそうな表情だとか、
喜怒哀楽、いろんな感情を露にしたプロデューサーさんが私の脳内を駆け巡った。

「き、嫌いなわけないじゃない」
「つまり好きだと」
「す、好き……っていうかそのぅ……」

雪歩ちゃん要素はどこへ行ってしまったのか、律子さんはいつもの調子に戻っていた。
その表情はどこか嬉しそうなもので、その目は少し輝いて見える。
そんな律子さんの表情を前にして私が抱く感情は、恐怖以外の何者でもない。
律子さんの巧みな話術、感情操作にコントロールされて、丸裸にされてしまいそう。
私は律子さんから受け取った雪歩ちゃん要素により、シドロモドロになってしまった。

「プ、プロデューサーさんは……素敵な方よ」
「まぁ悪い人ではないですね」
「事務所に戻ってきたときも、プロデューサーさんの方が疲れてる筈なのに
 私に『お疲れ様です』なんて気を遣ってくれるし」
「ほう」
「も、もちろんプロデューサーさんが私をそういう対象として見てくれるなら、
 それはとっても嬉しいことだけど……でもそれは願望であって…………」
「叶うことは無い……と?」
「そう」

別に自分を必要以上に卑下したり、謙遜したりするつもりはない。
私が無駄に年をとってしまったが為に、理想が理想でしかないことを知っているってだけ。
全てが上手くいくと錯覚していた若いころと違って、自分を冷静に、客観的に見れるというだけ。
普通に考えて、自分がプロデューサーさんの恋愛対象になれるとは思っていない。
ごくたまにそういう間柄になったことを想像したり、超展開で告白されるという妄想をしたりもする。
でもそのイメージを具現化させるような努力をしようとは少しも思わなかった。
努力してなんとかなるような問題であれば、私だって努力するわよ……。
費用対効果が見受けられないのなら、その努力は無駄になる。
無駄になるような意味の無い努力なら、しないほうがいいに決まってるもの。
仮にも芸能事務所に勤める私が、某吸血鬼のように無駄無駄言っちゃダメなんだろうけど、
三十路という人生の泥濘に片足を突っ込み始めた孤独な女に、自信を持てと言うのはあまりに酷よ。

「第一、プロデューサーさんと私とじゃ釣り合わないわよ」
「私はお似合いだと思いますけどね」
「もう……律子さんはお世辞が下手ね」
「本当にそう思ってるんですって」

765プロはみんな仲良しで、家族のような……という表現も大げさではない。
だから顔を見れば、相手が冗談を言っているのか、本心なのかぐらいは見分けられる。
律子さんの顔を見てみると、どうやら本心で言っているらしかった。
でもだからこそ、私はこの話を終わらせなければならないと思った。
お似合いだと言ってくれた律子さんの期待には応えられない。
そういう悪い方面での、迷いなく確固たる自信が私にはあったから。

「はい! この話はもう終わりっ! さぁー仕事仕事〜」
「もう……」

バカボンのパパの真似じゃないけど、これでいいのよ。
私だって自分のことぐらいよーーーくわかってるつもりよ。
自分がプロデューサーさんには相応しくない、ツマンナイ女だってことくらい。


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