過去ログ - 春香「ねぇプロデューサーさん?」
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59:1/3[saga]
2012/08/24(金) 01:38:28.11 ID:+gymnPO2o
【A little bait catches a large fish.】

基本的に出社の順番は、四人まで決まっていて、私は一番乗りで765プロにやってくる。

そして私が一日のスケジュール等を手帳に書き終え、パタンと閉じたところで、
朝に弱い小鳥さんが眠そうな顔をして、時には女を忘れて欠伸と共にやってくる。

小鳥さんと一言二言話をして、そろそろ沈黙が襲ってくるかという頃合に、
今度はプロデューサーが軽快な革靴の音を鳴らしながら事務所のドアを潜る。

プロデューサーを含めた三人でまた一言二言話をしていると…………
春香が元気一杯に勢いよくドアを開けて、朝の挨拶を部屋中に響かせる。

今朝もこうして、小鳥さんとプロデューサーが事務所に居る。
それだけを取ればいつもと変わらない朝の風景、あとは春香を待つのみだけど、
その細部を見てみると、いかに今朝の状況がイレギュラーなものなのかが分かる。

一つ目は……

「ふんふんふ〜ん♪」

小鳥さんはいつになくご機嫌で、楽しそうに鼻歌を弾ませながら、
デスクや来客用テーブルを、音楽を奏でるような流れる手つきで拭いている。

その頬の緩みようは、並大抵の幸運では発生しないもの。
私の記憶している限りでは、小鳥さんは必ず眠そうにしていた。

にこやかにしていることすら珍しいのに、加えて鼻歌まで披露するなんて、
やっぱり何かがオカシイとしか思えないわね。

そして二つ目は……

「……ふぅ」

プロデューサーは疲労が溜まっているのか、真白い彫刻のような感情のない顔、
焦点の定まらぬ目をして、しきりにコーヒーの入ったタンブラーに口を付けていた。

プロデューサーは頼りないところもあったりなんかするけど、気力だけはあるというか、
特に朝は空回りするんじゃないかってほどエンジン全開フルスロットルなのに……。
今日はエンストどころか、燃料すら入っていないように見受けられる。

陰と陽、喜と哀、静と動……相対する二人のテンション。

それはあきらかに昨日起きた出来事によるものだとは思うけれど、
食事に行った二人が、どういう店に行ったのか、またどういう会話を交わしたのか、
全体的にどういう結果に終わったのかは、直接聞いたわけではないから計り知れない。

だから今日、小鳥さんやプロデューサーの雰囲気で掴み取ろうと思っていたのに、
一方は超絶スマイルで、もう一方は無表情ということになると、どうにも掴みようがない。

二人共が笑顔なら、上手くいったということになるし、
共に落胆の表情なら、ダメだったのだと予想は出来るのに………。

「おはようございまーす!」

ドアが壊れんばかりの勢いで開かれ、片手を挙げた春香が飛び出してきた。
驚いたプロデューサーがコーヒーを気管に吸い込み、苦しそうに噎せる。

「プロデューサーさん、おはようございますっ!」

「あぁ……おはよう………」

「あ、あれ?」

相変わらず低いテンションのまま応対するプロデューサーに面食らったのか、
春香は不思議そうな顔で首をかしげ、こめかみ辺りに人差し指を当てる。

それほどプロデューサーの様子はいつもと違っていて、春香が不審がるのは無理もない。


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